週刊エコノミスト Online 著者に聞く

障がい者の活躍できる特性見つけ豊かな共生社会の実現へ 北條一浩・編集部

『大川総裁の福祉論!』

旬報社、1870円

著者 大川豊さん(大川興業総裁)

 暮らすこと、楽しむこと、働くこと。誰もがあたりまえに実践している行為が、障がい者となると急に不自由を強いられてしまう。この社会にはまだそうした場面が多すぎる。

「私は福祉の専門家ではないし、今でも無知だと思っています。しかし、30年以上、お笑いの仕事とともに政治の現場を取材してきて、最も無視され続けている分野が福祉だと痛感しています」

 本書は、知的および身体障がいもある息子さんを育てている野田聖子衆議院議員を皮切りに、知的障がい施設の運営者や障がい者の性を考える非営利組織、知的障がい者の一般雇用を可能にしたチョコレートメーカーの代表など、さまざまな人びとを訪ねて対話した記録だ。

「従来にはない発想で障がいのある方々が生活し、体を動かし、表現し、そして働く場を創り出しているチャレンジングな人たちです。われわれが“障がいのある方には無理じゃないか”と思い込んでいる既成概念に風穴を開け、活動の幅を広げている。その意味では、アウトローばかりが集合した本ですね(笑)」

 例えば、全国に拠点が60カ所あり、およそ650人のスタッフのうち約300人が障害者手帳や療育手帳を持っているという久遠チョコレートの活動などたいへんユニークだ。

「代表の夏目浩次さんは、“チョコレートって溶けるから、失敗したらまた作り直せばいい”と。そして、“健常者が1人でやっている作業を障がいのある人たち3人でやったって別にいいじゃないか”とさらりと言ってのける。それでしっかり利益を上げ、健常者と変わらない給与を支払うことができているわけです」

 大川さんは、個々人の障がい特性を見極め、得意なことを発見し、その能力によってみんなが豊かになれる共生社会を作り出すことがなによりも肝要だと考える。

「私が毎月開催しているお笑いライブに、福祉施設の方が来てくれる…

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