教養・歴史 Book Review

『経済学者たちの日米開戦 秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く』 評者・吉川洋

著者 牧野邦昭(摂南大学准教授) 新潮選書 1300円

戦時下の「幻の報告書」 ほぼ全貌を精緻に分析

 もうだいぶ前のことになるが、日米が開戦した場合、日本経済に何が起きるのか、シミュレーションを行った「幻の報告書」に関する番組を見た。この報告書は、多くの一流の経済学者を動員した陸軍省戦争経済研究班によってつくられたが、全体を統括したのが陸軍中佐、秋丸次朗だったことから「秋丸機関」と通称されている。

 プロジェクトで中心的な役割を果たした一人が、東京大学経済学部の教授だった有沢広巳である。有沢は、昭和13(1938)年の第二次人民戦線事件で検挙された後、東大を追われ訴訟中だったが、そうした身でありながら昭和15年から17年にかけて、秋丸機関で活動を行っていたのである。

残り803文字(全文1138文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月28日号

バイオ製薬最前線 肥満 がん 認知症第1部 創薬テーマ編肥満14 画期的な減量効果の治療 ノボ、リリー2強が世界席巻■中桐成美/中西拓司17 内臓脂肪減少薬 大正製薬が「アライ」発売 吸収抑えて25%を排せつ■中西拓司19 米国の現実 成人の「4割超」の深刻 国防にも影響するレベル■岩田太郎20 体 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事