教養・歴史 書評

理念と理念の分裂から人と人が対話する時代へ=ブレイディみかこ

×月×日

 英国で、ベネディクト・カンバーバッチ主演の『Brexit :The Uncivil War』というドラマが放送された。EU(欧州連合)離脱の国民投票前に繰り広げられた離脱派と残留派のPR戦の内幕を描く作品だ。これを見て考えたのは、情報戦における「言葉」の役割だ。残留派は事実を示すデータやエビデンス(証拠・裏付け)に重点を置いたが、離脱派は人々の深層心理にこびりつく、彼らの人生の物語を代弁できるスローガンを練りに練った。

 A・R・ホックシールドが、『壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き』(岩波書店、2900円)で「ディープストーリー」と呼んだもののことを思い出した。それは必ずしも真実ではなく、「あたかもそのように感じられる」物語であり、シンボルという言語を使って感情が語る物語のことだ。

残り1001文字(全文1360文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月28日号

バイオ製薬最前線 肥満 がん 認知症第1部 創薬テーマ編肥満14 画期的な減量効果の治療 ノボ、リリー2強が世界席巻■中桐成美/中西拓司17 内臓脂肪減少薬 大正製薬が「アライ」発売 吸収抑えて25%を排せつ■中西拓司19 米国の現実 成人の「4割超」の深刻 国防にも影響するレベル■岩田太郎20 体 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事