教養・歴史コレキヨ

小説 高橋是清 第36話=板谷敏彦

挿絵 菊池倫之
挿絵 菊池倫之

(前号まで)

 前田正名のもとで殖産興業のための白書作成を手伝う是清。『興業意見』と銘打った白書は物議をかもし、前田は更迭、同様に粛正されるかと思われた是清には海外出張の辞令が出た。

第36話 欧米視察の旅

 明治18(1885)年11月20日、是清は特許業務視察のための欧米出張が決まると宮中に参内した。明治帝に謁見するのは参事院における商標登録のプレゼンテーション以来で、当時の海外出張はそれだけの大事である。

 翌日農商務省書記官に昇進、この地位は軍隊で言えば大佐、府県でいえば県令(知事)に相当する奏任官最高位である。高橋是清31歳、農商務省に雇員の資格で出仕してわずか4年半、とても早い出世なのだ。

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