教養・歴史 書評

忙しさにかまけていても「よそ者」に映る危機=楊逸

×月×日

 新年はカルロス・ゴーン被告の逃亡劇で明けた。なんだかハリウッド映画を見るような心地に浸っていると、今度は強い感染力を持つという新型肺炎が旧正月中の中国を恐慌に陥れる。

「大災害が生じる以前、人はたいてい忙しさにかまけて災いが近づいているのに気がつかない」。『どこか、安心できる場所で 新しいイタリアの文学』(パオロ・コニェッティほか作 関口英子、橋本勝雄、アンドレア・ラオス編 国書刊行会、2400円)に収録された短編小説「恋するトリエステ」の冒頭の一文だ。

「軍服を着て出征していった息子や夫、婚約者がすべての家庭にいたわけではない。たとえ身内にそういう人がいたとしても、なにができただろう。じっと我慢し、うまくいくことを願いながら、なにか別のことを考えて毎日の生活を埋めるしかなかった」。こう書かれる1937年春のトリエステ。ユダヤ人青年アルベルトが姉夫婦のもとに身を寄せたところから物語が始まった。

残り909文字(全文1314文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月28日号

バイオ製薬最前線 肥満 がん 認知症第1部 創薬テーマ編肥満14 画期的な減量効果の治療 ノボ、リリー2強が世界席巻■中桐成美/中西拓司17 内臓脂肪減少薬 大正製薬が「アライ」発売 吸収抑えて25%を排せつ■中西拓司19 米国の現実 成人の「4割超」の深刻 国防にも影響するレベル■岩田太郎20 体 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事