経済・企業 挑戦者2020

「高齢者の転職は難しい」が徐々に過去の物となりつつあるワケ 即戦力シニアのニーズが高まる中、マッチングサービスが急成長

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 高齢者総活躍の時代へ。若手人材の確保が困難になる一方で、即戦力となるシニアの需要が急増している。

(聞き手=吉脇丈志・編集部)(挑戦者2020)

オンライン講座ではシニア就活のノウハウを公開している シニアジョブ提供
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 50歳以上専門の人材仲介会社です。就職した人の平均年齢はおよそ62.5歳で、70代も全体の15%を占めます。最高齢は76歳で電気設備の設計に就労しています。約半分が正社員雇用、7割以上がフルタイム就労です。建設など技術職や専門職を中心に経理や医療事務など幅広く紹介しています。

 2019年末時点で1054件の就労支援実績(派遣を含む)があります。コロナ禍で足元の求人数は約4割減少となりましたが、若い人の採用が難しくなってきているので、長期的に見ればシニアの採用はどんどん増えています。高齢になれば、求職は難しいというのが常識でしたが、昨今は即戦力を求めるニーズが高まっており、シニアが欲しいという声が多いんです。

 ハローワークだと条件上は応募可能な求人でも、高齢を理由に書類選考で通らないことが多く、100社応募して1社内定が出るかどうか。ハローワークからの紹介状は一度に3社くらいしか出してもらえないでしょうから、1年間求職活動を続けて、うまくいけば就職できるかな、くらいです。当社は高齢者を積極的に求める企業を開拓しているので、年齢で断られることがありません。だいたい15社くらいの応募で内定を得られるので、求職期間が短くて済みます。

 一番の難関は書類選考です。応募書類作成は全て当社で代行しています。シニアの求職ならではのノウハウがあって、例えば実績や表彰歴は書かない。自信があるベテランは言うことを聞かなそうだと思われてしまうから、デメリットのほうが大きいんです。

就活で出資のプレゼン

 在学中に行きたいと思える会社があまりなくて、社会にとって価値がある事業で起業したいと考えました。資金が必要だったので、就職面接の場で新規事業のプレゼンをして、2000万円を出資してもらいました。さらに優秀な起業パートナーを見つけるために他大学に潜入し「一緒に事業をやろう」と半ば強引に勧誘して、会計事務所向けのソフトウエア開発で起業しました。

 あるとき取引先から「シニアを採用したい」と相談を受けたんです。会計事務所は事業主の相談に乗ることも多いので、経営者と同世代のシニアが求められるんですね。世の中では「高齢者は就職が難しい」と言われているけど、意外とシニアを採用したいという要望はあるのかもしれない、と感じました。調べてみるとシニアの転職方法は、創業した当時ハローワークか知り合いのつてしかなかった。日本は世界で一番高齢者が多くて、かつ人材紹介会社の数も世界で一番多いんですよ。求職したい高齢者はたくさんいるのに、ほかの誰もやらないんだったら自分がやるしかない、と思いました。

 当初は、求職者を集めるのが大変でした。街に出て、見た目が60歳以上だと思ったら片っ端から「仕事探していますか」って声を掛けて。その場で履歴書を書いてもらって「仕事見つかったら連絡します」と体当たりでした。

 いまの構想は求人データベース事業。強みはシニアを欲している企業をたくさん知っていること。このデータをもっと活用すれば、たくさんのシニアが就職できます。

(本誌初出 中島康恵 シニアジョブ社長 社会は高齢者を求めている 20200929)


企業概要

事業内容:シニアの人材サービス提供

本社所在地:東京都新宿区

設立:2014年8月

資本金:2600万円

従業員数:42人


 ■人物略歴

中島康恵 なかじま・やすよし

 1991年生まれ。茨城県出身。2014年国士舘大学卒業。大学在学中に事業を立ち上げ、卒業後の14年8月にシニアジョブの前身となるIT会社を設立。15年から50歳以上専門の人材サービス事業を開始。

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