教養・歴史 いま学ぶ!渋沢資本主義

幻の兜町ベネチア構想=藤森照信/11

日本橋川を挟んだ対岸に日本橋兜町の渋沢邸(中央)、旗が立つ建物は渋沢がトップを務めていた第一国立銀行 井上探景画「江戸橋ヨリ鎧橋遠景」より、日本銀行貨幣博物館所蔵
日本橋川を挟んだ対岸に日本橋兜町の渋沢邸(中央)、旗が立つ建物は渋沢がトップを務めていた第一国立銀行 井上探景画「江戸橋ヨリ鎧橋遠景」より、日本銀行貨幣博物館所蔵

『明治の東京計画』(1982年刊行)を書いた当時、渋沢栄一にまつわる都市計画としては「田園調布」(東京・大田区)が知られる程度だった。調べていくと、渋沢は「日本橋兜(かぶと)町」(東京・中央区)の辺りに本格的なビジネス街を造ろうと構想していたことが分かり、驚いた。

 1887(明治20)年前後、兜町の一角には株式取引所に銀行集会所、商業会議所、渋沢の第一国立銀行、三井物産、郵便汽船三菱会社と主要な経済組織や企業が建ち並んでいた。いち早く電灯が灯(とも)り、電話が通った。

 渋沢の夢は、東京を商都にすることだった。貿易港を横浜から東京の隅田川河口に移して運河を浚渫(しゅんせつ)し、港と中央駅との間を2本の道でつなぎ、その間の兜町にビジネス街を造るという見事な構想だった。

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