教養・歴史 書評

"まるで三国志? タイプライターを巡る欧・中・日の抗争史=加藤徹

近代化の象徴としてのタイプライター抗争史=加藤徹

 トーマス・S・マラニー著『チャイニーズ・タイプライター』(中央公論新社、比護遥訳、4950円)は、異色の中国近代史だ。著者は米スタンフォード大学の中国史の教授。

 19世紀半ばに発明されたタイプライターは、西洋文明の圧倒的優越性を象徴する利器だった。人がしゃべる速さで、どんな内容も清書できた。各メーカーは技術の改良と販売の競争にしのぎをけずった。

 非西洋国では「タイプライターで書けない非効率的な文字を使う国は、文明国になれない」という焦りが広まった。欧文タイプの技術を応用し、タイのシャム語や、日本のカナ文字専用のタイプライターも開発された。一方、数万種類の漢字を使う中国では「打字機」(タイプライターの中国語訳)の開発は難航した。

残り541文字(全文883文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月14日・21日合併号

ストップ!人口半減16 「自立持続可能」は全国65自治体 個性伸ばす「開成町」「忍野村」■荒木涼子/村田晋一郎19 地方の活路 カギは「多極集住」と高品質観光業 「よそ者・若者・ばか者」を生かせ■冨山和彦20 「人口減」のウソを斬る 地方消失の真因は若年女性の流出■天野馨南子25 労働力不足 203 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事