教養・歴史 書評

コロナ禍の歴史を記述 検証作業の基礎成す2冊=井上寿一

 コロナ禍は、ワクチン接種率の向上の一方で、オリンピック・パラリンピックの開催にともなう感染拡大のリスクを抱えていて、予断を許さない状況が続いている。コロナ禍の発生からの約1年間を振り返りながら、どうすべきかを考えようとしても、人の記憶はあいまいで、近過去のことでも思いちがいや記憶ちがいを免れない。

 そこで読売新聞東京本社調査研究本部編『報道記録 新型コロナウイルス感染症』(読売新聞社、2200円)を読む。本書は詳細かつ正確な時系列に即した記述(「日本版タイムライン」)の有用性にとどまらず、コロナ禍が経済・社会・文化へ及ぼす影響にまで議論を展開している。

 通読後、初期対応に誤りがあったと批判的な思考に進むのか、それとも困難な状況のなかでできる限りのことをしていたと肯定的に評価するようになるのか、判断は人それぞれだろう。重要なのは本書が議論の前提となる共有すべき客観的な事実を提供していることである。コロナ禍をめぐる歴史の検証作業は、本書が出発点となるだろう。

残り450文字(全文884文字)

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