教養・歴史 書評

中国哲学史の視座から、過去3千年の世界史を読み解く試み=加藤徹

「人が人になる」とは何か… 古く神もいない中国哲学の地平

 哲学は「動詞」である。「名詞」ではない。知を働かせ「何か?」「なぜか?」と考えるプロセスそのものが哲学だ。思想は哲学の結果にすぎない。が、本の書き手も読み手も、思想史とか、人名・書名の羅列が哲学史だと思い込みがちだ。

 中島隆博『中国哲学史 諸子百家から朱子学、現代の新儒家まで』(中公新書、1155円)は、東京大学教授である著者が水先案内人となり、過去3000年の世界史をめぐる異色の哲学史である。目的地は、現代の混沌(こんとん)とした世界の理解だ。

 著者は喝破する。中国哲学とは「中国における哲学」でも「中国的な哲学」でもない。「中国(語)の経験を通じて、批判的に普遍に開かれていく哲学的な実践」である。著者は既存の常識にも疑念のメスを入れて再考しつつ、中国人がインドの仏教や西洋のキリスト教、近現代の西洋など外の世界といかに対決してきたかを丹念に読み解く。

残り515文字(全文924文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月14日・21日合併号

ストップ!人口半減16 「自立持続可能」は全国65自治体 個性伸ばす「開成町」「忍野村」■荒木涼子/村田晋一郎19 地方の活路 カギは「多極集住」と高品質観光業 「よそ者・若者・ばか者」を生かせ■冨山和彦20 「人口減」のウソを斬る 地方消失の真因は若年女性の流出■天野馨南子25 労働力不足 203 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事