教養・歴史 書評

ソ連の対日戦、シベリア抑留を検証、加害国として自国史を振り返る=井上寿一

加害国としての自国史 新たに検証の必要

 ロシアのウクライナ侵攻とソ連の対日戦は似ている。4月3日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア軍がジェノサイド(大量殺りく)をおこなったと非難した。対する1945年8月9日未明、ソ連は日ソ中立条約を破って対日戦を始めた。旧満州(現在の中国東北部)に侵攻したソ連軍が現地の日本人居留民を蹂躙(じゅうりん)したことはよく知られている。

 平井美帆『ソ連兵へ差し出された娘たち』(集英社、1980円)によれば、葛根廟(かっこんびょう)事件(葛根廟=ラマ教寺院の近くで避難民がソ連軍戦車の攻撃によって殺りくされた事件)で1000人以上が犠牲になった。同書はソ連兵の性暴力を戦争の多重犠牲者としての女性の視点から描く。彼女たちを「人柱」にした日本人の男性社会も告発の対象となっている。

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