教養・歴史 書評

オスマン帝国後宮で何が行われていたか=本村凌二

最新研究成果と共に描く

 イスタンブールの旧市街を見下ろす小高い丘の上にトプカプ宮殿がある。15世紀半ば、東地中海に君臨するビザンツ帝国を滅ぼして台頭したオスマン帝国の心臓部をなす。その宮殿の一角に「ハレム」とよばれる聖なる後宮がある。

 かつて日本にも大奥とよばれた後宮があったから、好奇心をあおる空間であるが、その実情について信憑(しんぴょう)性のある情報は少ない。その謎多き組織について、小笠原弘幸『ハレム女官と宦官たちの世界』(新潮選書、1815円)は、そこでなにが行われていたのか、その全貌を最新研究の成果をまじえて描き出す。

 本書は、そのハレムの成り立ちから出発して、ハレムが整備されていく有り様、さらに王族、女官、宦官(かんがん)たちなどそれぞれの立場や役割がさまざまな側面から記されている。女官や宦官はそもそも奴隷身分だったことや、それとともに奴隷はムスリムからは選ばれないことなどの黙約があったのだろう。

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