教養・歴史 書評

現代ロシアの「インテリゲンツィヤ」はどこにいる=本村凌二

19世紀ロシア帝政下に自由を求めた思想家たちの実像を探求

 ソ連からロシアになって30年以上がたった。いくぶんか社会の自由度も増し、隠し事も少なくなっているかのようだ。実際、A・コンチャロフスキー監督の「親愛なる同志たちへ」は、1962年のフルシチョフ政権下の事件を題材にした映画だったが、大規模なストライキが発生し、暴徒化した群衆を鎮圧するなかで、おそらく100人を超える死者が出たこの出来事を扱っている。この事実は、ソ連が崩壊するまで約30年間隠蔽(いんぺい)されていたが、一昨年公開された同映画で白日の下にさらされたというわけだ。ロシアも情報公開が進み、自由な行動ができるようになったとも思えるが、いかなる変化があったのか、実情は疑わしい。

 バーリン著『ロシア・インテリゲンツィヤの誕生 他五篇』(岩波文庫、1111円)は、19世紀ロシア帝政下の思想家たちがいかに強く自由を求めたか、その人物像を探求する。具体的には、ゲルツェン、ベリンスキー、トゥルゲーネフなどについて深い共感を込めて描き出す。そこでは、非暴力的改革の可能性を秘めた肯定的側面が取り上げられている。

残り464文字(全文949文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月14日・21日合併号

ストップ!人口半減16 「自立持続可能」は全国65自治体 個性伸ばす「開成町」「忍野村」■荒木涼子/村田晋一郎19 地方の活路 カギは「多極集住」と高品質観光業 「よそ者・若者・ばか者」を生かせ■冨山和彦20 「人口減」のウソを斬る 地方消失の真因は若年女性の流出■天野馨南子25 労働力不足 203 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事