教養・歴史 小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

多くのことに興味を持つのですが、広く浅い追究で終わります/174

カトリーヌ・マラブー(1959年〜)。フランスの哲学者。可塑性の概念によって現代思想をけん引している。著書に『抹消された快楽』などがある。(イラスト:いご昭二)
カトリーヌ・マラブー(1959年〜)。フランスの哲学者。可塑性の概念によって現代思想をけん引している。著書に『抹消された快楽』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 多くのことに興味を持つのですが、広く浅い追究で終わります 物事を深く追究することができません。いろいろなことに興味を持つのですが、どうしても広く浅くで終わってしまうのです。どうすればいいでしょうか?(製薬会社勤務・40代女性)

A 物事の新たな可能性を見る「可塑性」を信じ、広く浅い追究の先に期待をかけよう

 人間には二つのタイプがあるのだと思います。一つのことを深く追究できる人と、反対に広く浅くという人と。物理的な時間の制限もあるでしょうから、なかなか広く深くというわけにはいかないという人もいるでしょう。

 すると、広く浅くというのもそう悪くはないように思うのです。そこで参考にしたいのが、フランスの哲学者カトリーヌ・マラブーの掲げる「可塑性」の概念です。

 彼女のいう可塑性とは、まず形を受け取る能力を意味します。粘土に力を加えれば、形が変わるように。ただそれは、柔軟性とは異なります。なぜなら、力を加えた粘土は、ゴムボールと違って元の形には戻らないからです。その意味で、可塑性には形を与える能力も含まれるとされます。

物事が始まる新サイン

 マラブー自身は、この可塑性の概念をさまざまな分野に応用しています。たとえば、脳神経の仕組みを可塑性で表現することによって脳科学に応用したり、「女性的なもの」という概念を可塑性の文脈で捉え、フェミニズムの議論に応用したりしているのです。さらにはグローバル社会…

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