教養・歴史 政策で学ぶ経済学

⑧源流を知る/3 格差をどう是正するか 前田裕之(最終回)

 資本主義について回る格差問題をどう改善し、持続可能な経済社会を構築するかは、経済学者の間でも意見が割れる。

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 成長政策と安定化政策は国全体の経済活動を活発にし、パイを大きくするための政策だ。パイが大きくなれば経済活動を担う個人や企業は総じて豊かになるが、パイの取り分には差が出る。パイの取り分の差(所得格差)に注目し、税や社会保障制度などを通じて格差を是正する政策が再分配政策である。

クズネッツ曲線

 経済成長と所得格差の関係を明らかにしたのは、ノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者、サイモン・クズネッツである。クズネッツは1955年に発表した論文で、米国、英国、ドイツの発展過程と所得分布の推移を基に、経済成長と所得格差の関係は経済の発展段階によるとの仮説を提唱した。ほとんどの人が最低水準の所得で生活している農業社会では、格差は小さい。工業社会に移行すると、熟練労働者の所得は上昇し、格差が広がる。さらに経済が発展し、農業から工業への労働移動が進むと、農業が縮小して格差も縮小する。

 1人当たりの所得を横軸、所得格差を縦軸に取ってグラフを描くと、逆U字型とな…

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