教養・歴史 鎌田浩毅の役に立つ地学

関東大震災100年 これから来る「活動期」に備えを/157 

 今年の9月1日は、1923年に発生した関東大震災から100年目に当たる。関東大震災では震度7に相当する激しい揺れに襲われ、現在の東京都や神奈川県を中心に11万棟近くの住宅が全壊した。地震の発生時刻が昼食の時間帯に重なり、約130カ所で火災が同時多発的に起きた。

 また、この日は日本海沿岸を進んでいた台風による強風も加わり、70カ所以上で次々と延焼が発生。焼失建物は21万2000棟を上回った。さらに、火炎を含む竜巻状の渦が立ち昇る「火災旋風」も起き、焼失面積は当時の東京市の約4割を占めた。死者・行方不明者は10万5000人を超え、明治以降の日本で最大の災害となった。

 地震は神奈川県西部の深さ23キロメートルで発生した。首都圏の地下では上から下へ「北米プレート」「フィリピン海プレート」「太平洋プレート」という3枚の岩板が重なり合っており、地震が繰り返し発生している(本連載の第73回を参照)。関東大震災はこのうち、北米プレートとフィリピン海プレートの境目である「相模トラフ」付近がずれ動くことで発生した。

 地震の規模を表すマグニチュード(M)は7.9で、1995年に約6400人の犠牲者を出した阪神・淡路大震災(M7.3)よりも8倍大きい。相模トラフは関東大震災だけでなく、1703年には元禄関東地震(M8.2)を起こしている。1万人以上の死者を出し、江戸の元禄文化を打ち砕いた巨大地震である。同時に発生した津波の高さは鎌倉で8メートル、品川で2メートルを記録した。

元禄からのサイクル

 最近の研究で、元禄関東地震は房総半島の沖合まで震源域が確認され、関東大震災の震源域はその西側半分である。いずれも海溝型の巨大地震で、関東大震災は元禄関東地震の再来と考えられる。

 両者を挟む220年間に、八つの地震が現在の首都圏を襲ってきた(図)。政府の地震調査委員会はこの間を一つのサイクルとして、将来のM7クラスの大地震の発生確率を出した。8回の発生から単純計算すると27.5年に1回起きていることになり、「今後30年以内に70%程度」という発生確率が導き出されている。

 さらに、220年間の地震活動を見る…

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週刊エコノミスト

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