教養・歴史 鎌田浩毅の役に立つ地学

木星の氷衛星探査/下 「エウロパ」に探る地球外生命/161 

NASA(米航空宇宙局)の木星探査機ガリレオが1996~97年に撮影したエウロパと表面の写真。赤茶色の部分は地質活動によって生じた氷以外の物質  NASA/JPL/University of Arizona
NASA(米航空宇宙局)の木星探査機ガリレオが1996~97年に撮影したエウロパと表面の写真。赤茶色の部分は地質活動によって生じた氷以外の物質  NASA/JPL/University of Arizona

 木星の衛星は地下に大量の水を保持するため、太陽系で「地球外生命」が存在する星の大本命とされている。欧州宇宙機関(ESA)が今年4月に打ち上げた木星氷衛星探査機(JUICE)は、四つある木星の巨大衛星のうち、「エウロパ」を主なターゲットとしている。

 ハッブル宇宙望遠鏡による観測から、エウロパの氷の地殻の下には「海」(内部海)があり、その海底には「熱水噴出孔」があると推定されている。しかも、地下の海水が氷の割れ目を通って表面に達し、噴水のような巨大な「プルーム」を作っている様子が撮影された。

 熱水噴出孔は地球の深海底にある「中央海嶺(かいれい)」にも存在し、周辺に生物が集まってコロニーを形成している。生命誕生の不可欠な条件に炭素や窒素、多種のミネラル成分が海に溶け込んでいることが挙げられ、熱水噴出孔では多種類の化学成分も一緒に噴き出しているため、生命存在の最有力候補とされている。

 エウロパの氷の地殻の下には、深さ60~150キロメートルの「内部海」があると考えられており、地球上で最も深いマリアナ海溝最深部(10.9キロメートル)よりはるかに深い。エウロパの地殻の下でも、地球の中央海嶺のように生命を育む環境がある可能性があり、衛星探査機でプルームの組成を詳しく調査する。

 探査機は海の成分を調べる「サブミリ波分光計」を搭載している。サブミリ波という電磁波を観測することで、噴出した海水や大気に含まれる水や有機物の量を検出することができる。特に注目されているのが「硫化水素」で、これを作り出す細菌「硫酸還元菌」がエウロパにいるかどうかを調べたい。

 そもそもエウロパの表面には硫酸があり、もし硫酸還元菌が内部海に存在していたなら、その硫酸を水素と化学反応させてエネルギーを取り出し、硫化水素を放出する。硫化水素はこのため、生命の存在指標として観測項目に挙がっている。

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