教養・歴史 書評

新語・流行語・隠語で最新中国の解明に挑んだ新書 孫崎享

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 私は国際問題に関し、発信している。中国の共産党大会については、中国のCCTV、香港のフェニックステレビが私の見解を報じた。従って中国についても日々ニュースを追っている。今、日本の識者で最も中国通なのは近藤大介氏ではないか。近藤氏は最近『ふしぎな中国』(講談社現代新書、990円)を出版した。実に面白い。

 彼は本書の狙いを「中国の34種類の新語・流行語・隠語を駆使して、現代中国の最新形を解明し、等身大の中国人を理解しようと試みた」としている。いくつかを見てみよう。第1章「スマホ世代の中国人の素顔」は社恐(シャーコン)(社交恐怖症のこと)、45度人生(スーシウードゥレンシェン)、白蓮花(バイリエンホア)(中国人女性の最新進化系)、潤学(ルンシュエ)(中国に見切りをつけて海外に行く若者たち)等の項目を立てて、説明をしている。

 例えば「45度人生」とはスマホ世代を対象にして、「上がろうにも進めず、下ろうにも落ちて来ない。あくせくしても動かず、寝そべっても平たくなれない」状態にあるとしている。

 彼はまた中国のいくつかの世代を「飢餓世代」「文革世代」「改革開放世代」「一人っ子世代」と分け、おのおのの世代の特徴を述べているが、「一人っ子世代」は「攻撃的人種」でないとしている。

 中国共産党大会では習近平支配体制が一段と強化された。潜在的に敵対的になる可能性がある人物は排除された。その典型は胡春華である。彼は一時期中国指導者の座を習近平と競ったといわれ、確実に次期首相の有力候補だった。だが彼は今次党大会で降格になった。

 近藤大介氏は胡春華の動静を長らく観察してきた。党大会前の胡春華の動きをこう記す。「『人民日報』の6面に、紙面の5分の3も使った署名記事を寄稿したのだ。(中略)そこには「習近平」が51回! も登場していた。「習近平総書記の『奥深い知恵と切々たる愛情』に根づいて……」など…

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週刊エコノミスト

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