東証上場維持基準の経過措置が25年3月から順次終了 抵触企業が迫られる「退場」 森下千鶴
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東証再編に伴う上場維持基準の経過措置対象企業は、262社と全体の6.8%を占める。基準未達なら上場廃止も現実になる。
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東京証券取引所は、22年4月の市場再編時に設けた経過措置により、上場維持基準を満たしていない企業の上場を一時的に認めてきた。この経過措置が25年3月以降順次終了し、すべての上場企業に本来の上場維持基準が適用されることとなる。
終了期限が迫る中、24年11月に東証が公表した資料によると、経過措置の対象となっている企業は、プライム、スタンダード、グロース3市場合わせて262社だ。市場再編時点の549社からは減少しているものの、いまだに全体の6.8%を占める。市場別の企業数では、プライムの4.0%である65社、スタンダードの9.4%である150社、グロースの7.8%である47社となっている。
プライム市場に目を向けると、基準の中でも特に流通株式時価総額、売買代金、流通株式比率の3項目の未達企業が多かった。このうち、流通株式比率は政策保有株式の売却など企業側がとるべき施策が比較的明確である。
一方、流通株式時価総額の達成は難易度が高い。この時価総額は「流通株式数×株価」で計算されるため、株価の上昇、すなわち企業価値自体の向上が大前提となるからだ。実際、プライム市場の経過措置適用企業65社のうち50社が時価総額100億円の基準を満たしておらず、他の項目よりも達成が難しいことが浮き彫りになっている。
市場変更、MBOも
さらに、現時点で流通株式時価総額を満たしている企業も、安心はできない。プライム市場上場企業について直近基準日の流通株式時価総額を確認したところ、基準値から2割以内に31社、5割以内に121社が位置している(表)。今後、ネガティブなイベントによって株式市場全体が急落するなど株価が大きく変動した場合には、時価総額基準とそれほど差がない企業が基準を下回るリスクもあるため注意が必要だ。
これから上場維持基準に抵触した企業は、売買代金に関する基準には6カ月、他の二つの項目には1年間の改善期間が設けられる。それでも基準を…
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週刊エコノミスト
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