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認知症と共生する社会を目指して~アルツハイマー病の原因にアプローチする治療法も登場~

Mint Images/ゲッティイメージズ提供
Mint Images/ゲッティイメージズ提供

認知症と軽度認知障害(MCI)の人の合計が1000万人を突破した(令和6年版高齢社会白書より)。

少子高齢化が進むにつれて、その人数はますます増えると予測されている。

認知症の人も包摂し、ともに希望を持って生きる共生社会を実現するために選ぶべき行動とは。

認知症とは、さまざまな脳の病気によって脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、記憶や判断力などの認知機能が低下して、社会生活に支障をきたした状態をいう(政府広報オンラインより)。厚生労働省によれば、日本の認知症または軽度認知障害の人の数は2022年時点で既に約1000万人、2040年には1200万人に上ると推計されている。

自分自身、家族や友人、職場の同僚など身近な人の誰もが認知症になってもおかしくない。国は本年1月に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」(以下「認知症基本法」)を施行するなど、認知症と共生する社会づくりを国家戦略として進めていく方針を鮮明にした。また、認知症の原因の多くを占めるアルツハイマー病のうち、早期アルツハイマー病に対する新たな治療薬も実用化されている。今こそ国民一人ひとりが、認知症や認知症の方に関する理解を深めるとともに、新たな治療に対する正しい知識を持ち、社会の一員として認知症に向き合っていくときだ。

当事者や家族が自分らしく生きるために

認知症の人と家族の会 代表理事 鎌田松代氏
認知症の人と家族の会 代表理事 鎌田松代氏

 こう話すのは、「認知症の人と家族の会」の代表理事を務める鎌田松代さんだ。実際、今84歳のある認知症当事者は75歳で認知症の診断を受けた後、絶望感から引きこもったが、医師の勧めで認知症カフェのコーヒー係を受け持ったことで前向きになり、講演活動などをしているという。

「認知症と共生する社会とは、認知症の人が取り残されたり、特別視されたりすることなく、診断前と同じような関係性を持てる社会。そして認知症の人だけでなく家族が自分らしい人生を生きることができて、個々人の多様性を認め合い活躍できる社会だと思います」

 認知症基本法では、認知症当事者が尊厳や希望をもち、安心して暮らせるようにするための国や自治体の責務などが定められており、政府は認知症施策推進基本計画の策定を行っている。

「国や地方公共団体がこの計画を速やかに具現化することを期待しています。また、私たちみんなが認知症に関心をもち、自分事として学ぶ姿勢をもつことも共生社会実現への第一歩になるでしょう。すでに1400万人以上が認知症サポーター講座を受講していますが、国や地方公共団体はステップアップ講座など、もっと学びを深める機会を作ってほしい。そこで学んだことは、認知症の人だけでなく、あらゆる人に優しい社会の土台になるでしょう」

 医療の世界では昨年、「アルツハイマー病」による軽度の認知症やMCIの原因となる物質の一つである「アミロイドβ」を標的とした「抗アミロイド療法」が登場(厚生労働省ホームページより)。認知症の人や家族には希望と大きな期待になるのではと鎌田さんは話す。

「認知症に対して『治療』という道が拓かれたのは大きな前進です。一方で、この治療を受けられる人は早期のアルツハイマー病に限定されています。また、副作用や治療費の問題、効果が見えにくいといった理由で治療を受けない人もいます。今後は、早期だけでなくより進行したアルツハイマー病やその他の認知症疾患の治療法が開発されるとともに、地域格差のない医療体制が構築されることを期待します」

新しい治療法が病院受診のきっかけに

東京大学大学院医学系研究科 神経病理学分野 教授 岩坪威氏
東京大学大学院医学系研究科 神経病理学分野 教授 岩坪威氏

 東京大学大学院医学系研究科教授の岩坪威氏は、アルツハイマー病の研究に長年にわたり携わってきた。

「アメリカでは、認知症が国力を削ぐ重大な要因と捉え、その原因の約6割を占めるアルツハイマー病の研究に30年以上前から取り組んできました。一方、日本は『年を取れば多少のもの忘れは仕方がない』と受け入れる雰囲気もありました。しかし最近は研究が進み、早期アルツハイマー病に対応する治療法が開発されたことなどで、日本の認知症対策も変わりつつあります」

 アルツハイマー病に対応する薬物療法といえば、過去20年以上にわたり、対症療法しかなかった。しかし昨年以降、脳の中にたまっているアミロイドβを取り除く抗アミロイドβ抗体薬が日本でも認可され、認知症の進行を抑制する可能性があるとして注目されている。

「抗アミロイド療法はアルツハイマー病の原因物質を取り除き、病態の根本的な進行を抑制するという革新的な治療法です。これを目指して30年間、研究者は試行錯誤を繰り返し、やっと形になってきました。治療の“手立て”があることがわかれば、もの忘れに悩む人は、診察を受けやすくなるでしょう。抗アミロイドβ抗体薬は、早期アルツハイマー病の中でも程度が軽いほうが効果は出やすいという特徴があるため*、早めに発見し、早い段階で診断を受けることが重要となります。まずは認知症について関心を持ち、認知機能に不安が出てきた場合には、躊躇せずにかかりつけ医や認知症専門医に相談してください」

 認知症になっても社会と関わりながら自分らしく生きてゆくために、認知症の治療を受けることも選択肢の一つとなっている。さまざまな取り組みや努力を重ねながら目指すべきゴールが、認知症当事者も周りの人も互いに支え合い、あたりまえに生活する共生社会なのだ。

*治療によりアミロイド関連画像異常などの副作用が出現する可能性がありますが、多くの場合は無症候性で、医師の適切な安全管理のもと対応されます。

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