資源・エネルギー

インタビュー「電池は国家のエネルギー戦略そのもの」森島龍太・電池サプライチェーン協議会業務執行理事

「畜電池を車載用にとどまらず電力の系統(送配電網)に接続する蓄電システムに広げることが重要」と語る電池サプライチェーン協議会の森島龍太業務執行理事に今後の取り組みを聞いた。(聞き手=金山隆一・編集部)

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 経済安全保障を考えるとき、再生可能エネルギーの電気を蓄え、送電網に接続できる定置用蓄電システムを拡大し、普及させていくことは、日本のエネルギー政策の一つの大きな切り口になる。定置用だけでなく、車載用電池も送電網につながると将来的には両者は溶け合い、社会全体のエネルギーの需給変動を吸収できるようになる。

 日本にとっていかにデジタル技術を駆使してEVや大型蓄電池を使ってエネルギーの自給率向上につなげるかが脱炭素のカギとなる。EV電池のポテンシャルは運転時の利用5%前後、シェアリングが普及しても10%に届くには時間がかかる。

 電池として利用してない時間と容量を、いかに電気として蓄えるかが、日本のエネルギー自給率向上の原動力になる。電池は国家のエネルギー戦略そのものだ。

電池情報を業界横断で共有

 重要なのは電池のリユースとリサイクル。そのためには電池の使用状況、電池の残る容量、希少金属の含有率などのデータを電池部材、電池製造、自動車、リユース、リサイクルなどに携わる業界横断で共有できる電池情報のデジタルプラットフォームを作っていくことが肝心だ。

 協会では、経済産業省と関連団体、自動車工業会などで情報共有できるプラットフォームづくりの取り組みを始めた。24年の社会実装を目指す。最終的にはこのプラットフォームの中で決済できる体制も目指す。協会のメンバーにはIT企業や金融機関もいる。

 電池をめぐる設備投資や開発、資源獲得は国家間の戦いとなっており、スピードが肝心だ。EVの普及が先か、充電インフラ整備が先か、電池の国産化が先か、鶏卵論争は多く発生するが、日本は電池産業のベースがあるのだから可能な限り果断に進めていく。


電池サプライチェーン協議会とは

 日本の電池サプライチェーン全体の競争力強化を目指し、政策提言やルール化を進める業界団体として2021年4月に設立。会員企業は、電池、部材、原料、製造設備、商社、IT、金融、自動車など140社。


 ■人物略歴

もりしま・りゅうた

 2000年4月トヨタ自動車入社。燃料電池車の研究、ハイブリッド車(HV)向けリチウムイオン電池の設計、HV・EV向けリチウムイオン電池の企画・開発などを経て、20年4月トヨタとパナソニックの合弁会社プライムプラネットエナジー&ソリューションズに出向。21年4月より現職(プライムプラネットと兼務)。


週刊エコノミスト2023年6月13日号掲載

電池サプライチェーン協議会 森島龍太 業務執行理事 「電池は国家のエネルギー戦略そのもの」

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