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週刊エコノミスト Online 書評

取次大手の日販がコンビニ配送から撤退 雑誌販売に大打撃 永江朗

 取次最大手の日本出版販売(日販)がコンビニ配送から撤退するというニュースが、雑誌出版社に衝撃を与えている。日販はローソン、ファミリーマート、セイコーマートへ雑誌等を配送しているが、業界紙『文化通信』によると、2025年2月までに終了するという。もっとも、代わって取次第2位のトーハンが引き継ぐとみられ、多少の空白期間ができる可能性はあるものの、一般読者への影響は少ないだろう。

 ただ、日販の撤退は雑誌販売がすでに抜き差しならない状況にあることを示している。日販がコンビニから撤退するのは利益が出ないからだ。00年代初めには7%ほどあったコンビニの総売上高に占める出版物の売り上げが、最近は1%程度にまで落ち込んでいる。売り上げが減っても配送する手間は変わらない。加えて、人手不足と燃料代の高騰が続いている。しかし、日販の後を引き継ぐとみられるトーハンにしても、その事情は同じだ。

 コンビニにとって、雑誌はかつてほど重要な商品ではなくなりつつある。売り上げは減っても、立ち読みで乱れた陳列を整えたり、立ち読みで汚損した商品のクレーム対応をしたりという手間は減らない。そのため、最近は立ち読みできないコンビニも増えている。

 一方、出版社にとっては、雑誌全体の売り上げが激減するなかで、コンビニが相対的に重要な販売チャンネルであることに変わりはない。最盛期には二万数千あったといわれる書店数はいまや9000店を割り込んだ。駅売店も減り、コロナ禍が拍車をかけた。一方でコンビニは大手・中堅合わせて6万店弱もある。1店舗当たりの売り上げは小さくても、コンビニ全体で考えると大きい。

 仮にトーハンもコンビニから撤退することになれば、雑誌出版社への打撃は計り知れない。続けられなくなる雑誌も出てくるだろう。雑誌が減れば書店も影響を受ける。売る商品が減るからだ。

 雑誌出版社はコンビニ販売がなくなることを想定して新たなビジネスを構築する必要がある。それがデジタルなのか、あるいは直販定期購読なのかはわからないが、何かやらなければ生き残れない。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。


週刊エコノミスト2023年12月5・12日合併号掲載

永江朗の出版業界事情 日販がコンビニ配送から撤退

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