全ジャンルに等距離かつ多彩だった野田暉行の曲を愉しむ絶好の機会 梅津時比古
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クラシック 野田暉行 追悼演奏会
一昨年の9月18日に亡くなった野田暉行(てるゆき)は、不思議な作曲家であった。西洋にも東洋にも、古典にも前衛にも、常に等距離なのである。
これは近現代におけるクラシックの作曲家、とりわけ日本の作曲家においては珍しい。日本の作曲家は、まず、ヨーロッパから遠く離れた日本で音楽することの意味を考えてから、作曲に踏み込む人が多い。
野田の作品は、前衛的な曲もあれば、民謡を編曲したものもあり、邦楽器を駆使した作品もあれば、オペラもありと、まさに多種多様。だが、そこに自分が作曲に向かうことの理由や、アイデンティティーの確立などは求めていないように思われる。本人はそうしたことも考えているのかもしれないが、少なくとも作品には生硬な形でそれが表れてくることはない。
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週刊エコノミスト
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