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週刊エコノミスト Online 書評

47年続いた近刊図書情報誌『これから出る本』が休刊 永江 朗

 日本書籍出版協会(書協)が刊行してきた近刊図書情報誌『これから出る本』が、12月1日刊行の12月下期号をもって休刊した。同誌の創刊は1976年5月。以来、年に23回刊行され、全国の主要な書店店頭で配布されてきた。

 毎号、掲載されてきたのは書協加盟出版社の近刊から各社が絞り込んだ情報。「哲学 心理学 思想」「宗教」「歴史」など33の部門にわけて、書名の50音順に配列していた。書名、著者名、判型、ページ数、税込み価格、対象読者、ISBNコード、発行所名、そして最大で60字程度の内容説明。

 書影もなく、大仰なあおり文句もない地味な情報誌だったが、読書家にとっては便利で貴重な道具だった。というのも、取次による配本システムが発達した日本では、出版社は刊行前のプロモーションにあまり力を入れてこなかった。プロモーションせずとも現物が全国の書店に配本されたからである。

 もちろん書協に加盟している出版社は391社(2023年5月15日時点)で、日本の全出版社の1割程度でしかないし(ただし流通額のシェア率は高い)、刊行される全点が同誌に掲載されるわけではない。しかしかつてはほかに代わるものがなかった。

 しかし、インターネットの登場と普及が状況を変えた。現在は日本出版インフラセンター(JPO)の出版書誌データベース「Books」(https://www.books.or.jp)が、既刊と近刊情報のほとんどを網羅している。書協加盟出版社に限らず、流通に不可欠なISBNコードをつけた本は発売日ごとに全点掲載されている。筆者自身も、Booksや「版元ドットコム」「ブクログ」などのサイトで近刊情報を集めるようになった。さびしいが「これから出る本」の休刊もしかたない。

 とはいえ、紙に印刷された同誌を書店でもらうと、有体物ならではの「得した感」があったのも事実。持ち帰った同誌に鉛筆で印をつけながら書籍購入計画を立てるのは楽しい時間だった。情報が限られていた時代だったからこそのあのワクワクする感じを、出版界はどうすれば取り戻せるだろうか。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。


週刊エコノミスト2023年12月26日・2024年1月2日合併号掲載

永江朗の出版業界事情 『これから出る本』、47年の歴史に幕

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