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週刊エコノミスト Online 書評

リアル書店と図書館をまたいで本を探せる「書店在庫情報プロジェクト」準備中 永江朗

 出版取次最大手の日販(日本出版販売)が発行した『出版物販売額の実態2023』によると、22年度の出版物のインターネット経由での販売額は書店経由での販売額を超えた。紙の書籍・雑誌に限ると、書店ルートの推定販売金額は8157億円だったのに対しネット経由は2872億円と依然として書店経由が圧倒的に多いが、電子出版物が6670億円と推定される。購入ルート別ではネット経由(紙の本+電子出版物)がリアル書店を超えたことになる。書店ルートは縮小し、ネットルートが伸びる傾向は今後も変わらないだろう。

 リアル書店からネット書店や電子出版物へと消費者が流れる原因のひとつに、リアル書店における在庫情報の不備が挙げられる。ネットで在庫情報を公開している書店も一部にはあるが、まだまだ少数で、各店を横断的に検索するのも難しい。1冊の本を探して何軒もの書店をハシゴした経験のある人は多いだろう。だからつい「急ぎの本はネットで」ということになる。

 しかし、現在準備が進められている「書店在庫情報プロジェクト」はこうした状況を変えるかもしれない。出版文化産業振興財団(JPIC)と版元ドットコム、カーリルによる共同事業である。

 カーリルは、借りたい本が全国のどの図書館にあり、貸し出し状況がどうなっているかをリアルタイムで知ることができるサービスを提供している。プロジェクトは、このカーリルのサービスを書店の店頭在庫情報と結びつけ、さらに版元ドットコムによる出版社の新刊情報・既刊情報ともつなげるというもの。JPICには多くの出版社や取次、書店、印刷会社、広告会社などが賛助会員として参加している。

 このプロジェクトがうまくいけば、読者は必要に応じて図書館で借りるか新刊書店で購入するかを選択できるし、たとえば「自宅近くの書店には在庫がないが、通勤経路上にある書店でなら購入できる」といった判断も可能になる。欲を言えば古書店の在庫情報などともつながればさらに利便性は増すだろう。これから実証実験に入るという同プロジェクトに期待したい。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。


週刊エコノミスト2024年1月23日・30日合併号掲載

永江朗の出版業界事情 本探しに朗報 新プロジェクトが準備開始

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