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週刊エコノミスト Online 書評

SHIBUYA TSUTAYAが500席規模の巨大“漫喫”に 永江朗

 改装のため昨年10月末から休業していたSHIBUYA TSUTAYAが、4月25日から営業再開する。ロゴも原研哉デザインにより一新。運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の広報資料によると、新しいロゴは〈世界中のIPによって、365日、国籍や世代を超えて、すべての人が夢中になれるコンテンツやイベントなどの“体験”を通して、ライフスタイルを提案していく、これまでにない新しい「カルチュア・インフラ」をつくっていくことをイメージしています〉とのこと。

 IPとはIntellectual Propertyの略。直訳すると知的財産。財産的価値のある情報のことである。これだけでは「なんのことやら」という感じだが、新生SHIBUYA TSUTAYAのフロア構成を見るとおぼろげながらわかってくる。

 CCC発表の概要では、地下2階から地上1階までは〈アニメーションや音楽などのエンタテインメントからハイブランドまで世界中のさまざまなIPとコラボレーション〉した期間限定のストアやイベントを展開。2階から4階はカフェとラウンジ。5階から7階はIPコンテンツとつながった書店、カフェ、ラウンジ。8階はスタジオ、屋上は野外イベントスペースになるという。

 アニメやコミック、音楽などを軸として、ただし書籍やCD、DVDなどパッケージメディアの販売やレンタルではなく、コンテンツに関連した体験を提供する施設といえばいいだろうか。カフェとラウンジは全館で約500席に及ぶという。巨大な漫画喫茶か、あるいはオタクのワンダーランドか。外国人観光客も視野に入れての生き残り策だ。

 SHIBUYA TSUTAYAは渋谷駅前のスクランブル交差点を見下ろすようにそびえ、CCCの旗艦店である。パッケージメディアの販売・レンタルから、体験型カフェへという業態転換はこれからの書店業を考える上でも示唆的だ。大手出版社の経営状況を見ても、好調なのは電子コミックとIPである。書店がそれに乗るとすれば、カフェ&ラウンジ化は有力な選択肢だ。ただし、そこまでして書店を続けるかどうか、経営者は判断を迫られる。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。


週刊エコノミスト2024年3月19・26日合併号掲載

永江朗の出版業界事情 SHIBUYA TSUTAYA、体験型カフェへ

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