❸開発は世界の新興企業が主導 過去10年で累計1兆3000億円調達 岩本学
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空飛ぶクルマの開発では、世界の新興企業がしのぎを削っている。豊富な資金の有無も成功のカギを握る。
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世界で有名な航空機メーカーはどこかと問われ、多くの人が最初に思い浮かべるのは米ボーイングや欧州エアバスだろう。リージョナルジェットを開発するブラジルのエンブラエルの名前を挙げる人もいるかもしれない。ではヘリコプターのメーカーはどうだろう。ヘリコプターの世界でも世界最大のメーカーはエアバスで、続いて米ロッキード・マーチン傘下の米シコルスキー・エアクラフト、伊レオナルド、米ベル・ヘリコプターが並ぶ。日本では川崎重工業がエアバスと一部の機体で共同開発を行っているが、それ以外は海外メーカーの機体をライセンス生産するのが主で、自国内での民間ヘリ開発は少ない。
いずれにせよ、人を乗せて空を飛ぶ機体を設計し、何万点という部品を統合して製造し、サプライチェーンをコントロールしながら量産することは非常に難しく、世界全体でも限られた数のメーカーしか存在しない。元々はもっと多くのプレーヤーが開発を行っていたが、莫大(ばくだい)な費用がかかり、1度の失敗で簡単に経営が傾いてしまうことから、統廃合が繰り返され、現在の寡占産業となった。
では空飛ぶクルマはどうかというと、開発を主導しているのは世界各地で過去10~15年以内に設立された新興企業だ。そこに更に新しいベンチャーが日々立ち上がり、また航空機・ヘリメーカーや自動車メーカーも加わり、正に群雄割拠の様相となっている。そこで、ここから連載の数回は空飛ぶクルマを開発する有望な機体メーカーを紹介していく。
性能が異なる三つのタイプ
まずは機体メーカーを比較する上で重要な三つのポイントを解説したい。
最初に、開発している空飛ぶクルマの種類に注目する必要がある。空飛ぶクルマと一口に言っても複数の機体タイプが存在し、性能が大きく異なる。具体的には、①複数のプロペラで飛行する「マルチコプター」、②固定翼とプロペラの双方を持ち合わせ、長距離飛行・高速飛行に適した「ベクタードスラスト」、③同じく固定翼を持ち性能的には①と②の中間にある「リフト&クルーズ」──の3種類に分けられる(図1)。①はドローンの発展形としての空飛ぶクルマの流れを強くくんだもので、②③は前回解説した固定翼を有するVTOL(Vertical Take-off and Landing)機を電動化した航空機という位置づけが強い。日本国内でも航空法上、①は「マルチローター」、②③は「垂直離着陸飛行機」と定義されており、法律的な位置づけも異なるものである。
開発している機体の性能の違いは、必然的にターゲットとする使用ケースの違いを表している。マルチコプター機は航続距離が限られているため、都市内でのエアタクシーや遊覧飛行などに使用することが想定される。固定翼を有する機体もまずは都市の中での旅客輸送に活用していくことになるが、より長い距離を速い速度で飛行することができるため、都市間の移動や物資輸送を狙うメーカーも多い。開発している機体はどの分類に当てはまるか、またその機体はどういった市場を狙っているか、という点は機体メーカーを見る上でまず持つべき視点である。
次に重要なポイントは、資金調達額である。航空機開発には莫大な資金が必要だ。空飛ぶクルマは旅客機よりもはるかに小型で電動化により部品点数も少なくなるため、ベンチャー企業でも開発できる可能性があるが、安全性と経済性を両立させた機体を実現するために多くの資金を必要とすることには変わりない。
空飛ぶク…
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週刊エコノミスト
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