令和のコメ騒動が教える中長期的コメ政策は生産量の自由化だ 稲垣公雄
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コメ価格の自由化は進んだが、生産量目標を固定する政策はそのままだ。そうした現行制度の課題がコメ価格の高騰として表れた。
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「コシヒカリ」5キログラムの今年11月の店頭小売価格(東京都区部)は、総務省「小売物価統計調査」によると3985円となった。前月比で1.05倍、前年同月(2422円)比では1.65倍となり、特に今夏以降の値上がりが激しい。2024年産の出荷が始まっても、高止まりの傾向が続く。
過去30年間でコメ価格高騰が大きく社会問題化したのは、1993年と03年の2回だ。特に93年は前年比で30%以上供給が減り(約1050万トン→約780万トン)、減少量は当時の備蓄量を大きく上回り、94年の消費者小売価格は前年比1.18倍となった。「平成の米騒動」といわれ、タイ米の緊急輸入なども行った。
03年も冷夏の影響で、前年比約15%、110万トンの供給減となった(890万トン→780万トン)。当時の政府米在庫量約150万トンに迫る減少量で、04年の消費者小売価格は前年比1.14倍となった。2回のその後だが、94年の生産量は約1200万トンまで大幅に改善し、04年もおおむね02年並みの生産だった。その結果、94、04年ともに小売価格は2年前の水準に沈静化した。
過去2回と比べ、今回の価格高騰の需給ギャップはそれほど大きくはない。23年産の作況指数は平年並みだったが、酷暑による品質低下の影響で、700万トン程度の需要に対し、約30万トン不足したとみられる。不足量も在庫量に比べ30%程度でしかない。それでも11月までの平均で、小売価格は過去同水準の前年比1.23倍となった。
24年産は品質など問題なく、需要量は十分満たされる見通しだ。過去2回を踏まえると、25年産も同様の水準で推移すれば、遅くとも25年半ばごろには高騰前の価格水準に落ち着いてくる可能性が高い。
農業基盤の減少加速も
実は、93年のコメ不足時は、国がコメを買い上げる食糧管理法時代で、コメの卸売価格自体はほぼ上昇していない。その後、95年の食糧法への移行に伴うコメの流通の自由化…
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週刊エコノミスト
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