増える電力需要 脱炭素電源含む需給調整がカギに 志田龍亮
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生成AIを中心とした電力需要の増加には、脱炭素電源との「時間」と「空間」のミスマッチ解消が重要になる。
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日本のエネルギー政策の根幹を定める「エネルギー基本計画」の議論が大詰めを迎えている。同計画は3年ごとの見直し検討が義務付けられており、今回の第7次計画の注目点の一つが「電力需要」に関する見立てだ。日本の電力需要は人口減少、省エネ進展などの影響からここしばらく減少傾向にあったが、それが一転する環境にあるからだ。
今年1月に電力広域的運営推進機関(OCCTO)が公開した見通しでは、データセンターへの大型投資、半導体工場の新規立地などに伴い、久しぶりに電力需要が増加傾向に転じた。また、第7次計画に向けた今回の議論でも、各機関・シナリオによって異なるものの、電力需要の見通しは2050年に20年比で1.3〜1.5倍程度の水準感が多く示されている。
電力需要増加のけん引役として特に着目すべきは、生成AI(人工知能)の普及だ。現状で日本のICT(情報通信技術)セクターの電力消費は総電力消費の2%程度と推計されるが、生成AIの利活用は計算量の爆発的な増加を生むため、特にデータセンター側での電力需要の急増が想定される。
生成AI普及に伴うDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展や生産性の向上、対日投資の増加などは経済面では喜ばしいものの、脱炭素電源が不足する日本でこうした新規需要にどう対応するかは大きな課題だ。解決のカギは「省電力技術の開発」と「電力需給バランスの確保」にある。
省電力技術の開発は、AI利活用を促しつつ消費電力を下げることにつながる。AIに特化した半導体チップ、光電融合技術、データ圧縮などに加え、電力消費効率に優れた小型AIの活用もポイントになろう。電力需給バランスの確保については、脱炭素電源の増強・拡大はもちろんだが、ここでは需要側の対策として「時間」と「空間」のミスマッチ解消に注目したい。
「学習」は余剰時に
時間のミスマッチ解消は、蓄電池の活用が代表的なものだが、それだけにとどまらない。脱炭素電源の中でもニーズの高い…
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週刊エコノミスト
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