インバウンド年間4500万人へ アジア新興国に潜在需要 後藤俊平
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円安が後押しする形で、訪日外国人観光客数が過去最多ペースで推移するだけでなく、消費額はそれ以上に伸びている。
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日本のインバウンド需要は急回復を遂げている。訪日外国人観光客は、新型コロナウイルス禍を受けた水際措置が撤廃された2023年4月末以降、大きく増加してきた。日本政府観光局の訪日外客統計によれば、24年7〜9月期の訪日外客数は910万人と、コロナ禍前の19年同期の778万人を上回り、この時期の過去最多を更新した。
国・地域別にみると、中国からの旅行者数がコロナ禍前の8割弱にとどまる一方、韓国や台湾など中国以外のアジア諸国や、欧米からの旅行者数が大幅に増加している。中国人観光客の回復ペースが緩慢な背景には、日中間の航空便再開の遅れがある。国土交通省が認可した国際線旅客便の運航スケジュールによれば、24年冬期の中国路線便数はコロナ禍前の8割弱で、再開の遅れが目立つ。
中国では不動産市況の悪化などを受けて景気が低迷しており、国民の海外旅行意欲が減退している。また、観光ビザを巡る各国の政策的な動向の影響も無視できない。中国人旅行者の回復は、シンガポールやマレーシアなど中国人のビザなし入国が認められている国で先行しており、日本を含むビザの制約がある国では回復が鈍い。
客数以上に増加しているのが、訪日外国人1人当たりの消費額だ。観光庁のインバウンド消費動向調査によれば、24年7〜9月期の訪日外国人の旅行消費額は1.9兆円と、19年同期(1.2兆円)の1.6倍超に拡大している。
これは、円安が訪日客1人当たりの消費単価を押し上げたことが背景にある(図)。22年以降、各国通貨に対して円安が進むなか、多くの外国人にとって訪日旅行の割安感が強まった。その結果、訪日客の消費単価は過去最高水準に達している。
中長期的にも拡大余地あり
インバウンド需要は、今後も引き続き拡大が予想される。訪日外客数は26年にかけて年間4500万人超へ増加すると見込む。けん引役となるのが、高成長が見込まれるアジアを中心とした新興国での海外旅行需要の高まりである。
一般に…
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週刊エコノミスト
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