課題山積の日の丸ファウンドリー「ラピダス」 春のテストラインが試金石 吉川明日論
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衆院選では半導体支援の旗振り役だった甘利明氏が落選した。技術者不足や顧客の取り込みなど課題はあまりに多い。
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石破茂首相は11月の第2次内閣発足後、早々に経済対策の目玉として、半導体や人工知能(AI)の分野で2030年度までに10兆円以上の公的支援を行う「AI・半導体産業基盤強化フレーム」を打ち出した。その支援策の中心に位置するのが、トヨタ自動車やソニーグループなど国内大手企業8社が出資して22年に設立された新会社ラピダスだ。
ラピダスはファウンドリー(製造受託)企業として、米IBMの技術を基に回路線幅2ナノメートル以下という最先端ロジック半導体の開発・量産を、27年初頭に開始することを目指す。ただし、現在、日本の国産ロジック半導体はルネサスエレクトロニクスなどが量産する40ナノレベルだ。ラピダスは極めて高い目標を掲げており、目標実現には多くの課題が立ちはだかる。
ラピダスの事業は政府支援が頼みの綱だ。ラピダスへの8社の出資は73億円にとどまり、1000億円規模の追加出資にめどをつけたとされるが、量産開始までに技術開発や設備投資に必要な資金は5兆円規模ととても足りない。そこで、経済産業省が所管する独立行政法人NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)がラピダスに「研究委託」する形で、北海道千歳市での工場建設や設備導入を進めている。
ラピダスにはこれまで9200億円の補助金交付が決まっている。今回のAI・半導体産業支援策の一環として、来年の通常国会にはラピダスへの政府機関を通じた債務保証を可能とする法案が提出される見込みだ。今後の資金調達にめどをつけた形だが、これが持続するかどうかには不安が付きまとう。今年10月の衆院選では、半導体分野への支援の強力な旗振り役だった甘利明元経済産業相ら数人が落選した。
加えて、当面の問題は技術者人材の問題だ。最先端の製造技術を経験した技術者は日本にはいない。IBMや欧州の研究機関imec(アイメック)などとの協業を諮っているが、2ナノレベルの最先端ロジックの量産に成功しているのは、世界最大のフ…
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週刊エコノミスト
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