生き残れるのか日産 深刻な“売れる技術”の欠如 河村靖史
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業績が急速に悪化する日産自動車。中国や米国での販売台数が低迷し、内田誠社長CEOの責任を問う声も上がる。
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日産自動車が再び経営危機に見舞われている。2024年4~9月期連結業績の当期利益は、前年同期比93%減の192億円と大幅減益となった。7~9月期では93億円の赤字だ。業績不振を受けてグローバルで生産能力の2割削減や従業員9000人の削減などのリストラ計画を断行する。8月の時点で3000億円を予想していた通期業績見通しの当期損益は、「未定」に修正した。ヒットが見込まれる新型車も見当たらない状況で、業績回復の道は険しい。
日産の業績が悪化しているのは主力市場である中国や米国での販売戦略が失敗しているからだ。4~9月期の中国販売は同5.4%減の33万9000台と低迷。中国はBYDなどの地場系自動車メーカーを中心に値下げ攻勢を仕掛けて販売を伸ばしており、日産に限らずトヨタ自動車、ホンダなど、日系メーカーは軒並み販売が低迷しシェアを下げている。それでも日産だけ業績不振が際立つのは、トヨタやホンダが中国のマイナスを補う北米で稼げていないからだ。
日産の4~9月期の北米販売は同1%減の62万2000台と小幅なマイナスだったが、問題はその中身だ。日産は米国で主力のスポーツタイプ多目的車(SUV)「ローグ」をはじめ、ほとんどのモデルで販売が苦戦している。このため、インセンティブ(販売奨励金)を積み増しており、これが北米事業の収益を圧迫している。トヨタ、ホンダも米国市場でインセンティブは上昇しているものの、日産と比べて影響が少ないのはインセンティブを抑えられるハイブリッド車の販売を増やして収益を確保しているからだ。
軽視された研究開発
日産は経営再建策として人員削減などで固定費を削減して年間350万台の販売でも安定的な収益を確保できる体制の構築を目指す。内田誠社長CEO(最高経営責任者)は「スリムで強靭(きょうじん)な事業構造に再構築し、商品力を高め、再び日産を成長軌道に戻す」と再建に自信を示したが、周囲の目は懐疑的だ。
日産車の販売低迷は、販…
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週刊エコノミスト
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