インタビュー「ペロブスカイト太陽電池で家庭での電気の自給自足を」宮坂力・桐蔭横浜大学特任教授
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政府が2040年の発電目標を掲げ、企業も25年の事業化を図るなど、次世代型太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」に注目が集まる。発明者の宮坂力〈みやさか・つとむ〉桐蔭横浜大学特任教授に道筋を聞いた。(聞き手=荒木涼子・編集部)
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ペロブスカイト太陽電池「ペロブスカイト」と呼ぶ特殊な結晶構造を持つ化合物を発電層に用いる太陽電池。材料をフィルムなどに塗布・印刷して作れ、製造工程が少なく大量生産でき、低コスト化が見込める。主要材料も日本の生産シェアが高いヨウ素を使い、経済安全保障面でのメリットもある。宮坂力氏が2006年に発明し、学会発表。09年に論文化した。
── ペロブスカイト太陽電池の事業化を目指す企業が一気に増えた。きっかけは?
■学術界で予想もしなかったレベルまでエネルギー変換効率が高まったことが大きい。実験室レベルではエネルギー変換効率25%超と、従来のシリコン系と比べて遜色がなくなった。太陽電池は発電効率が上がれば、面積を小さくでき、部材も設置費用もコスト削減につながる。もう一つ、温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」への機運が、世界中で高まったこともある。
── 技術的にはどんなブレークスルー(革新)が?
■特別なことがあったというより、研究者がいっそう増え、新材料などのアイデアが多く出たことで、性能と耐久性がジワジワと上がった。特に中国に勢いがある。世界の研究者の半分以上は中国勢だろう。
── 中国では企業が販売を始めた。
■中国はガラス基板を使った重い「ガラス型」や、ガラス基板でシリコン系と組み合わせた「タンデム(複層)型」の開発を目指している企業が多い。一方、日本は基板にフィルムを採用した開発がメインだ。“薄くて軽くて、折り曲げられる”ことを看板にしている。
── 日本独自の戦略ということか。
■中国はフィルム型はほとんどやっていない。ガラス型はフィルム型に比べ作りやすいし、性能、耐久性どちらも高めやすい。逆に言えば、中国との価格競争になる。一方、フィルム型の製造には、多様な素材が必要だ。素材も、それらを組み合わ…
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週刊エコノミスト
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