公共交通を舞台に始まる〈クレカのタッチ決済〉vs.〈アプリのコード決済〉のシェア争い 澤田真一
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Suicaなど交通系ICカードが広く使われてきた鉄道やバス事業者で、クレジットカードのタッチ決済を導入する動きが急拡大している。
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全国各地の鉄道・バスなどで、クレジットカード(クレカ)のタッチ決済による運賃決済の導入が進む。首都圏では東急電鉄、京王電鉄、東京メトロなどが今年、実証実験として導入。関西でも近畿日本鉄道、阪急電鉄、大阪メトロ、阪神電気鉄道の私鉄4社がまったく同じタイミングでタッチ決済サービス開始に踏み切った。
運賃決済では「Suica」(スイカ)などの交通系ICカード一択という状況から、キャッシュレス決済環境そのものが大きく変化している。日本に来た外国人旅行者も、普段使いのクレカで電車やバスに乗れるようになったのだ。
しかし中高年層の主婦や学生にとりクレカは手軽な決済手段とは言いがたい。クレカを持つには審査が必要で、ある程度の収入や貯蓄がないと作ることは困難だ。公共交通機関とは元来「誰もが気軽に利用できるインフラ」である。
そこで注目されているのが、ビザやマスターカードなどの国際クレカブランドが付与されたデビットカードだ。クレカとは違い、預金残高と連動する。残高以上の買い物はできない仕組みで、負債は発生しないため、カード発行に審査はない。いわゆる“現金派”にも使うハードルは低いのではないか。
経済産業省が今年3月に発表した統計によると、2023年の国内でのキャシュレス決済のうち、クレカは83.5%、デビットカードが2.9%、コード決済が8.6%だった。18年はクレカが90.7%、デビットカードは1.8%、当時登場間もなかったコード決済は0.2%だった。クレカの比率は5年の間に7%以上も縮小し、デビットカードとコード決済が躍進を遂げたのだ。
指輪型デバイスも登場
公共交通機関のタッチ決済導入ラッシュにおいて実証実験などと銘打ち実質的に主導するのは、日本のクレカ大手、三井住友カードだ。同社提供の決済ソリューションを活用した事業で、デビットカードのさらなる普及をもくろむ背景もうかがえる。
そして、デビットカードの指輪版とも…
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週刊エコノミスト
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