歴史書の棚
掲載記事 282件
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英国人の審美眼による格好の西洋美術史入門=本村凌二
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「百聞は一見に如(し)かず」とは、海外に旅行したときしばしば肌身で感じる。スペイン南西岸のトラファルガー岬は、その沖合で、1…
2020年3月27日
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軍と政党は一卵性双生児 陸軍の政治化詳細に追う=井上寿一
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日本近代史における悪役が軍部、なかんずく陸軍であることはいうまでもないだろう。このような既存の陸軍像に対して、小林道彦『近…
2020年3月20日
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「論語」を知って分かる日本人の価値観の根源=加藤徹
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中国史を学ぶと日本が分かる。「2500年前の古代中国なんて今の自分の生活に関係ないさ」と思う人は、守屋淳『「論語」がわかれ…
2020年3月13日
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日本独自の哲学史を穏健・中正に論じる=今谷明
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昨年春まで某大学で「日本文化史」の講義を担当したが、テーマに困った末、“日本学芸史”なるものをでっち上げて、古代から幕末に…
2020年3月6日
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新型ウイルスの脅威の下 カミュの傑作『ペスト』を再読=本村凌二
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歴史家の叙述は面白くないと難じられることがある。専門研究者として事実叙述は正確であっても、読者に感興を起こさせない。迫真あ…
2020年2月28日
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反知性主義横行の時代に投げかける実証研究=井上寿一
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戦後進歩派知識人の代表と称される丸山眞男の日本政治思想史研究は、今日ではさまざまに批判されている。丸山の名を世に知らしめた…
2020年2月21日
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「民」と「官」に分断した中国社会を説き明かす=加藤徹
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映画も書籍も、シリーズは第2作が勝負だ。岩波新書の「シリーズ 中国の歴史」第2巻として刊行された丸橋充拓『江南の発展 南宋…
2020年2月14日
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戦後を通じて類書なし 80年ぶりに名著復活=今谷明
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刀剣は、神話時代までさかのぼって、作刀および残された刀について記録されている。奈良石上(いそのかみ)神宮蔵の七支刀(しちし…
2020年2月7日
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古代地中海文明に浸る 「知の巨人」の旅行記=本村凌二
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この40年ほどの間、ほとんど毎年のように遺跡めぐりをしている。大方は専門研究の対象である地中海沿岸地域であり、オリエント、…
2020年1月31日
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佐藤栄作の再評価から日本の長期政権を考える=井上寿一
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昨年11月20日、安倍晋三首相が憲政史上、最長の在任日数となった。戦後において安倍首相に次ぐ長期政権を担ったのは佐藤栄作で…
2020年1月24日
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曹操とはいかなる人物か 評判の小説、邦訳発売=加藤徹
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中国史では、60年に一度の庚子(かのえね)の年は天下大乱になるという不吉なジンクスがある。1840年、アヘン戦争勃発。19…
2020年1月17日
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二十二社選定の基準は? 詳細な第一級神社ガイド=今谷明
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二十二社とは、平安時代に国家が定めた一種の社格で、以降変更されることなく幕末維新に至った。したがって日本を代表する神社群と…
2020年1月10日
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イメージ先行の存在 真実に迫る画期的な書=本村凌二
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ヴァイキングには略奪者の印象が強い。「角のついた兜(かぶと)をかぶった北欧の海賊」がユーラシア西北岸に出没するかのように語…
2020年1月3日
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気鋭の近代史研究者 陰謀史観ギリギリの提起=井上寿一
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加藤陽子『天皇と軍隊の近代史』(勁草書房、2200円)は、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(新潮文庫、750円)など…
2019年12月20日
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従来の中国史を大胆刷新 構成の妙光る新シリーズ=加藤徹
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中国人が書く中国の通史は、つまらない。「中国は昔も今も一つ」「中国史は階級闘争の歴史」「現在の中国共産党が最高である」等の…
2019年12月13日
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食生活が飛躍的に多彩に 江戸時代の楽しさ活写=今谷明
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食生活の歴史の上で、江戸時代の果たした役割は大きい。平安時代、摂関家の大饗(だいきょう)から始まった饗応儀礼は、室町期の椀…
2019年12月6日
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宇宙誕生までさかのぼる人間の壮大な歴史と限界=本村凌二
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「グローバル」という言葉が口にされるようになって久しい。人間、物資、情報が地球規模で交換・交流されるようになり、昨今、世界史…
2019年11月29日
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近代日本政治史研究の第一人者による名著復刻=井上寿一
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岡義武『転換期の大正』(岩波文庫、1070円)、同『近代日本の政治家』(岩波文庫、1070円)は名著復刻と呼ぶべきだろう。…
2019年11月22日
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類例ない特異な中国史 農村の目線から読解=加藤徹
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建国70年を迎えた中国は今も「二元社会」である。中国の中には都市部と農村部という二つの国がある。浜口允子(のぶこ)『現代中…
2019年11月15日
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綱吉の「生類憐みの令」「動物愛護」説に痛棒=今谷明
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将軍徳川綱吉の「生類憐(あわれ)みの令」といえば、誰でも知っている。江戸西郊の中野や大久保、四谷に広大な犬小屋を建てて収容…
2019年11月8日
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疫病と戦った西洋医療がインドに与えた変化と忌避=本村凌二
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21世紀の先進諸国では、流行病といえば冬季のインフルエンザぐらいで、それも死にいたる者はきわめて少ない。流行病あるいは疫病…
2019年11月1日
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今後警戒するべきは右傾化より分極化=井上寿一
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リベラル勢力は安倍(晋三)長期政権下で日本の「右傾化」が進んでいると批判する。本当だろうか。考える手がかりを求めて、塚田穂…
2019年10月25日
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日中協働を育成した4人の日本人の姿を描く=加藤徹
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「コメモレイション」という言葉がある。未来に語り継ぐべき人物や歴史的な出来事を、記念・顕彰する行為を指す。記念碑や記念館、記…
2019年10月18日
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空間政策の観点で見た豊臣秀吉の天下統一=今谷明
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幼児虐待や京都アニメーションの放火事件など、物騒な殺人事件が頻発している。インバウンド(訪日外国人旅行)の盛行とは逆に、日…
2019年10月11日
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歴史書の棚 世界で最も危険な国には豊かな古代世界があった=本村凌二
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1970年代にアフガニスタンを旅した友人が言っていたことが心に残っている。「貧しい国だが、あんなにのどかで穏やかな国はなか…
2019年10月4日
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世界史の中で再構成した日本近現代史を読む=井上寿一
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日本近現代史に関する本は書店にあふれている。それらの本を手にする動機も人それぞれである。ある人は自身の歴史観を補強してくれ…
2019年9月27日
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神格化された作曲家 今こそ真の再評価を=加藤徹
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現代の中国では「人民の音楽家」として絶対的な存在が2人いる。1人は国歌の作曲者で日本の鵠沼(くげぬま)海岸で溺死した聶耳(…
2019年9月20日
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内閣情報調査室とは何か 実際と謎に迫る2冊=井上寿一
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日本版CIA(米中央情報局)の別名を持つ内閣情報調査室(内調)は謎のベールに包まれているかのようにみえる。実際には内調の主…
2019年9月13日
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練達の訳者しかできないモンテーニュの入門書=本村凌二
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19世紀末に出たH・G・ウェルズ『タイム・マシン』は、過去にも未来にも時間を自由に行き来できるという夢を広げた。定めなき未来…
2019年9月6日
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「頼む」に着目して分析 新たな視座示す日本人論=今谷明
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ハッサクといえば、今では大型の夏みかんの一種を指すが、もとは八朔と書き、8月1日の行事を意味していた。この日に、従者は主人…
2019年8月30日
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三国志研究に新機軸 歴史書の在り方問う=加藤徹
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『三国志』を研究する学者の世界は、まさに“三国志的”だ。文学研究者、歴史研究者、文化研究者の三つの学派が、魏・呉・蜀の三国の…
2019年8月23日
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元号と政治は無縁でない 時々刻々の舞台裏明かす=井上寿一
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新元号「令和」の発表はぎりぎりまで、毎日新聞「代替わり」取材班『令和 改元の舞台裏』(毎日新聞出版、1000円)によれば、…
2019年8月16日
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記録に記憶が影落とす 同時代史の面白さ=本村凌二
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昨年3月末、早大を定年退職した折、私の最終講義は「ネロ帝と裕次郎」。ローマの歴史家タキトゥスの少年時代はネロ帝の治世、私の…
2019年8月2日
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新一万円札に登場決定 若き日の渋沢栄一を活写=今谷明
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福沢諭吉と交代して、新1万円札の肖像に渋沢栄一が決定した。偽札防止と印刷局の技術革新のためというのが交代の主な理由のようだ…
2019年7月26日
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驚異的な速度で著作続々 「古典中国」の渡邉義浩氏=加藤徹
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書評を書くのが追いつかない驚異的な速度で、良質な著作を続々と出す学者がいる。「古典中国」を専門とする早稲田大学の渡邉義浩教授…
2019年7月19日
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日米安保と憲法第9条は「共存」しうるのか=井上寿一
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6月29日のG20大阪サミットの閉幕後の記者会見において、アメリカのトランプ大統領は、日米安全保障条約の廃棄の可能性につい…
2019年7月12日
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多文化混在の孤高の島 シチリア史を堪能する=本村凌二
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第二次大戦後、イタリア映画はひときわ輝いていた。なかでもヴィスコンティ監督「山猫」は傑作中の傑作といえるほど観客を魅了した…
2019年7月5日
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巫女を通じて全貌に迫る伊勢神宮理解の入門書=今谷明
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伊勢神宮は、皇室の先祖神である天照大神(あまてらすおおみかみ)を祀(まつ)った大社で、明治以前では「神宮」といえば伊勢神宮…
2019年6月28日
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能楽師が読み解くスリリングな『論語』=加藤徹
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安田登『すごい論語』(ミシマ社、1800円)は、知的な興奮と躍動感に満ちた対談集だ。 著者はプロの能楽師である。能と『論語…
2019年6月21日
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現代の起点の大正時代に生存権の出発を読む=井上寿一
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平成から令和へ、時代が移り変わる時、別の時代の時を思い起こす。たとえば明治から大正へ、どのように時代は移り変わったのか。こ…
2019年6月14日
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作家にして研究者が描く傲岸不遜なドゴール評伝=本村凌二
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パリに空路で向かえば、シャルル・ドゴール空港に着く。同名の人はもう半世紀前にフランス大統領を辞任し、翌年に逝去した。若者に…
2019年6月7日
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武士団が台頭した時代の経過、伝承まで綿密に分析=今谷明
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桓武平氏の有力者・平将門が天慶(てんぎょう)2(939)年、坂東(ばんどう)諸国を荒らし回って“新皇”と称し、翌年2月、藤…
2019年5月31日
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変化し続ける『西遊記』 ダイナミックな歴史を読む=加藤徹
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中国の古典小説『西遊記』の物語は、日本でも人気がある。孫悟空が活躍する子供向けの漫画やテレビアニメは多い。そのため日本では…
2019年5月24日
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昭和天皇含め指導者の「歴史的構想力」を問う=井上寿一
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戸部良一・寺本義也・野中郁次郎編著『国家経営の本質』(日本経済新聞出版社、2000円)は、世界的転換期の1980年代に、マ…
2019年5月17日
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「嫉妬」を制御するイタリアの特異な三角関係=本村凌二
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人間の感情のなかで「嫉妬」というのは、なかなか制御しにくい。 18世紀のイタリア貴族社会の生活風俗を描いたロベルト・ビッツ…
2019年5月10日
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楠公再評価の一方で、冷静な実証分析が登場=今谷明
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第二次大戦中、軍隊では、上官に「貴様は出身地はどこか」と問われ、「栃木県足利市です」と答えようものなら、鉄拳制裁に遭う、と…
2019年5月3日
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不安と厭世観が漂う「戦間期」の日中関係=加藤徹
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「戦間期」は重い。第一次世界大戦と第二次世界大戦のはざまの、嵐の前の静けさの時代。第一次大戦が残した問題や、もやもや感、不安…
2019年4月19日
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元号は国民と共に 令和時代は文化国家へ=井上寿一
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新しい元号は令和と決まった。5月1日から令和の時代が始まる。所功・久禮旦雄・吉野健一『元号 年号から読み解く日本史』(文春…
2019年4月12日
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多文化・異文化問題で歴史の先例を読む=本村凌二
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時計まわりでたどれば、ロシア、リトアニア、ベラルーシ、ウクライナ、スロバキア、チェコ、ドイツに囲まれた国、それがポーランド…
2019年4月5日
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誤解された元号擁護者 津田左右吉を読む=今谷明
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改元が間近に迫っている。 現在の元号は、1979年に成立した「元号法」によるもので、「元号は、皇位の継承があった場合に限り…
2019年3月29日