歴史書の棚
掲載記事 267件
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歴史書の棚 鍵は自衛隊と警察の関係 50年前の事件の謎を解く=井上寿一
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今年は三島由紀夫の没後50年だった。評者は事件が起きたすぐ近くの中学校に通っていた。その日のただならぬ雰囲気は教室にも伝わ…
2020年12月11日
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「緩く」遊びつつも深い ユニークな『老子』訳解書=加藤徹
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古代中国の人物・老子は、実在すら疑われるほど謎に満ちている。彼の著書『老子』は、現実社会の激動と一線を画し、内省的な思索を…
2020年12月4日
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「眩しさ」から分断国家へ 史実と実感で記す米国史=本村凌二
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戦後すぐに生まれた団塊世代の青少年時代、アメリカは輝いていた。白黒テレビシリーズの『サーフサイド6』では、マイアミビーチを…
2020年11月27日
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「極私」の日記として読み直す新たな試み=今谷明
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藤原定家(ていか)といえば、小倉百人一首や新古今和歌集撰者(せんじゃ)として、また「三夕(さんせき)」(新古今集の「秋の夕…
2020年11月20日
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令和時代も再検証必要 象徴天皇制の将来像=井上寿一
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昨年の令和時代の始まりは、象徴天皇制度の将来像を考える大きなきっかけだったはずである。ところが実際には今年に入ってからの「…
2020年11月13日
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「二元構造」で理解する 中国の歴史と付き合い方=加藤徹
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岡本隆司『教養としての「中国史」の読み方』(PHP研究所、1800円)は、野心的な教養書だ。中国とは何か、日本人の今までの…
2020年11月6日
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あの大劇作家もまた為政者と無縁でない時代=本村凌二
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「世界はすべてお芝居だ。男と女、とりどりに、すべて役者にすぎぬのだ」とは、シェイクスピアの有名な科白(せりふ)である。とはい…
2020年10月30日
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よみがえる夭折の思想家 仏典研究に一石を投じる=今谷明
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江戸(近世)の思想家といえば、儒学・国学(自然科学では蘭学)と相場が決まっているなかで、商都大坂では、儒学でも国学でもない…
2020年10月23日
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崩壊までの経緯で追う 憲法と政治との関わり=井上寿一
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坂野潤治『明治憲法体制の確立』(東京大学出版会)は刊行から半世紀近くを経て古典的な名著となっている。近代日本の出発点におけ…
2020年10月16日
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文明の「合散離集」と人口変動を追う中国史=加藤徹
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「人口」は「人の口」だ。想像してほしい。億万の「口」が毎日モノを食べてうごめくさまを。中国史の主役は、英雄でも美女でもない。…
2020年10月9日
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「暴君」の実像に迫り史実を丹念に整理=本村凌二
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シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』のせいでもなかろうが、かつてカエサルは英語読みのシーザーと表記された。そのうち「シ…
2020年10月2日
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白石の公正さ、宣長の誤り…日本の歴史書を通観した名著=今谷明
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日本人が自国の歴史をどのように著してきたか、これを古代から近代まで通観した書物は、実はありそうでほとんど見当たらない。 坂…
2020年9月25日
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各専門家が徹底検証 戦後昭和史再考促す良書=井上寿一
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すでに6冊が刊行されているちくま新書の『昭和史講義』シリーズに戦後編が加わった。筒井清忠編『昭和史講義【戦後篇】(上)』(…
2020年9月18日
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豊かな想像力と時代考証 北宋の悲劇描く傑作漫画=加藤徹
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青木朋(とも)著『天上恋歌~金の皇女と火の薬師~(1)』(秋田書店、600円)は、歴史小説を超えた、新しい趣向の漫画作品だ…
2020年9月11日
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調和、公平、自立 時空をまたぐ哲学の旅へ=本村凌二
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「思いに気をつけなさい、思いは言葉になります。言葉は行動になり、行動は習慣になり、習慣は性格になります。そして、性格は運命に…
2020年9月4日
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戦争とは何なのか 視覚伝達による体験継承=井上寿一
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モノクロの写真がカラーになると、遠い過去も今と地続きになる。庭田杏珠×渡邉英徳『AIとカラー化した写真でよみがえる 戦前・…
2020年8月28日
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評伝の形式取りつつ室町期の特異な状況活写=今谷明
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戦後の論壇では天皇に関する問題は甚だ微妙であり、学界でも天皇の事跡を論ずることはタブー視されてきた。嵯峨天皇(8~9世紀)…
2020年8月21日
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研究者の個性が色濃い 漢字の字源諸説の面白さ=加藤徹
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私のような素人が見ても、漢字の字源研究は面白い。研究者の個性が濃いのだ。 そもそも3000年も昔の漢字の字源を解明するのは…
2020年8月14日
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日本人の行動規範はいかにして形成されたか=今谷明
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新型コロナウイルスの世界的感染状況下、日本は強制的な都市封鎖(ロックダウン)も行わなかったのに、重症者・死亡者ともに欧米諸…
2020年7月31日
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各時代の世界が一目瞭然 画期的な歴史地図に学ぶ=本村凌二
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ときには掛け値なしに薦めたい本がある。今役立つだけでなく、一生にわたっていつでも使えそうな教養本でもある。DK社編著、スミ…
2020年7月24日
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喜びや楽しみもあった イメージ変える新研究=井上寿一
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サンドラ・シャール『「女工哀史」を再考する』(京都大学学術出版会、6200円)は博士論文に基づく学術書であり、価格も高く、…
2020年7月17日
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絵図の史料で読み解く 古今東西の歴史の実相=加藤徹
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「画像史料を駆使する図像学は、文献資料ではわからない歴史の実相を生き生きと甦(よみがえ)らせます」。杉原たく哉著『アジア図像…
2020年7月10日
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壊す天皇と造る武家 平安京の盛衰を読み解く=今谷明
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都城制という研究分野がある。藤原京、平城京、平安京など大王(天皇)の居所としての“首都”がどう移転し、諸施設がどう配置され…
2020年7月3日
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古典古代史全体を渉猟 名著が文庫本で復活=本村凌二
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人生のなかでは、想像もしなかった出来事に遭う。私事にわたるが、私はいわゆる東大受験生だった。ところが、1969年は、学園紛…
2020年6月26日
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橋本内閣から現在に至る官邸主導政治の強さ=井上寿一
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安倍晋三内閣のコロナ禍対策は、欧米諸国と比較すれば肯定的に評価できるとしても、アジア諸国内では突出して成果を上げているとは…
2020年6月19日
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社会を締め付け制度疲労 明朝が歩んだ自壊の過程=加藤徹
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中国は「放(ファン)」(自由化)と「収(ショウ)」(引き締め)の繰り返しだ。毛沢東が中国共産党への批判も歓迎するとした19…
2020年6月12日
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戦乱期に教団存続果たす宗教者の一代記=今谷明
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戦国時代の本願寺は、日本で最後の寺社勢力の雄として、全く特異な存在であった。トップは法主(ほっす)と称して鎌倉期の親鸞以来…
2020年6月5日
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歴史学的な見方の獲得へ 事例豊富な連続講義集=本村凌二
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47歳の甥(おい)の誕生日に図書カードを贈ったら、「若いころ歴史に無関心だったが、このごろ面白くて、歴史本を買う」というメ…
2020年5月29日
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コロナ禍の危機的状況下 浜口雄幸再評価を読む=井上寿一
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「コロナ禍」の困難な状況をどう克服するか、政治のリーダーシップが問われている。「コロナ禍」にともなう経済の危機的な状況は、「…
2020年5月22日
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壮大な騎馬民族の視点で相対化した中国史の良書=加藤徹
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古松崇志著『草原の制覇』(岩波新書、840円)は「シリーズ 中国の歴史」全5巻の第3巻だ。本シリーズの特徴は、中国を「草原…
2020年5月15日
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歴史資料としての偽文書 同時期刊行の2冊を読む=今谷明
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偽書・偽文書に関する歴史書が、偶然にも同じ日に発行された。原田実著『偽書が揺るがせた日本史』(山川出版社、1800円)と馬…
2020年5月1日
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歴史人口学者の先見の明 今こそ速水融を読む=本村凌二
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歴史を長期的・全体的にながめるとき、歴史人口学とよばれる視点はことさら基本となるのではないだろうか。フランスの歴史人口学者…
2020年4月24日
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「スペインかぜ」当時に新たな社会建設を学ぶ=井上寿一
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新型コロナウイルス感染症にどう対応すべきか、日本近代史に手がかりを求めて考えてみようと本を探したものの、大半は入手困難だっ…
2020年4月17日
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日中韓の論理を読み解く刺激的な時事エッセー=加藤徹
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岡本隆司『東アジアの論理』(中公新書、820円)は、ちょっと毒のある時事エッセー集だ。著者は京都府立大学の教授で、専門は中…
2020年4月10日
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幅広い視野で和食を俯瞰 農学者の異色の日本史=今谷明
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米と日本人。あまりに当たり前な取り合わせで、歴史学では十分に論じられていなかったように思う。にもかかわらず、最近では201…
2020年4月3日
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英国人の審美眼による格好の西洋美術史入門=本村凌二
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「百聞は一見に如(し)かず」とは、海外に旅行したときしばしば肌身で感じる。スペイン南西岸のトラファルガー岬は、その沖合で、1…
2020年3月27日
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軍と政党は一卵性双生児 陸軍の政治化詳細に追う=井上寿一
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日本近代史における悪役が軍部、なかんずく陸軍であることはいうまでもないだろう。このような既存の陸軍像に対して、小林道彦『近…
2020年3月20日
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「論語」を知って分かる日本人の価値観の根源=加藤徹
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中国史を学ぶと日本が分かる。「2500年前の古代中国なんて今の自分の生活に関係ないさ」と思う人は、守屋淳『「論語」がわかれ…
2020年3月13日
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日本独自の哲学史を穏健・中正に論じる=今谷明
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昨年春まで某大学で「日本文化史」の講義を担当したが、テーマに困った末、“日本学芸史”なるものをでっち上げて、古代から幕末に…
2020年3月6日
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新型ウイルスの脅威の下 カミュの傑作『ペスト』を再読=本村凌二
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歴史家の叙述は面白くないと難じられることがある。専門研究者として事実叙述は正確であっても、読者に感興を起こさせない。迫真あ…
2020年2月28日
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反知性主義横行の時代に投げかける実証研究=井上寿一
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戦後進歩派知識人の代表と称される丸山眞男の日本政治思想史研究は、今日ではさまざまに批判されている。丸山の名を世に知らしめた…
2020年2月21日
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「民」と「官」に分断した中国社会を説き明かす=加藤徹
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映画も書籍も、シリーズは第2作が勝負だ。岩波新書の「シリーズ 中国の歴史」第2巻として刊行された丸橋充拓『江南の発展 南宋…
2020年2月14日
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戦後を通じて類書なし 80年ぶりに名著復活=今谷明
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刀剣は、神話時代までさかのぼって、作刀および残された刀について記録されている。奈良石上(いそのかみ)神宮蔵の七支刀(しちし…
2020年2月7日
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古代地中海文明に浸る 「知の巨人」の旅行記=本村凌二
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この40年ほどの間、ほとんど毎年のように遺跡めぐりをしている。大方は専門研究の対象である地中海沿岸地域であり、オリエント、…
2020年1月31日
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佐藤栄作の再評価から日本の長期政権を考える=井上寿一
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昨年11月20日、安倍晋三首相が憲政史上、最長の在任日数となった。戦後において安倍首相に次ぐ長期政権を担ったのは佐藤栄作で…
2020年1月24日
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曹操とはいかなる人物か 評判の小説、邦訳発売=加藤徹
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中国史では、60年に一度の庚子(かのえね)の年は天下大乱になるという不吉なジンクスがある。1840年、アヘン戦争勃発。19…
2020年1月17日
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二十二社選定の基準は? 詳細な第一級神社ガイド=今谷明
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二十二社とは、平安時代に国家が定めた一種の社格で、以降変更されることなく幕末維新に至った。したがって日本を代表する神社群と…
2020年1月10日
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イメージ先行の存在 真実に迫る画期的な書=本村凌二
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ヴァイキングには略奪者の印象が強い。「角のついた兜(かぶと)をかぶった北欧の海賊」がユーラシア西北岸に出没するかのように語…
2020年1月3日
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気鋭の近代史研究者 陰謀史観ギリギリの提起=井上寿一
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加藤陽子『天皇と軍隊の近代史』(勁草書房、2200円)は、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(新潮文庫、750円)など…
2019年12月20日
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従来の中国史を大胆刷新 構成の妙光る新シリーズ=加藤徹
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中国人が書く中国の通史は、つまらない。「中国は昔も今も一つ」「中国史は階級闘争の歴史」「現在の中国共産党が最高である」等の…
2019年12月13日