国際・政治 世界経済総予測2022
EU離脱を“後悔”しているかもしれないイギリス国内の大混乱=石野なつみ
有料記事
英国 EU離脱に強まる“後悔” 北アイルランドも不安定化=石野なつみ
2020年1月末に欧州連合(EU)を離脱した英国。新型コロナウイルスの感染拡大でその影響は顕在化していなかったが、21年夏以降は物流網の混乱に加えてインフレも加速。市民生活にも広く影響が及ぶようになり、EU離脱への“後悔”が頭をもたげ始めた。北アイルランドを巡る情勢も不安定化しており、さまざまな火種がくすぶっている。
21年9月に行われた民間の世論調査。英政府のEU離脱への対応を巡り、「評価しない」という回答が53%を超え、「評価する」の18%を大きく上回った。その原因は市民生活の混乱だ。例えば、9月下旬にはガソリンの備蓄不足が発生。英国軍も投入して輸送支援した結果、沈静化したが、ガソリンスタンドに長蛇の列ができる事態が続いた。
英政府は、経済活動の回復や国内の風力発電力不足、コロナ危機で重量物運搬車(HGV)の免許試験が中止されたことが原因と主張する。ただ、EU離脱を受け、欧州域内からエネルギーを安定した価格で調達できなくなり、またEU出身のHGV運転手が帰国してしまったことが状況を悪化させた。英政府は外国人運転手対象の短期ビザを提供したが申請数は少なく、長期的な解消の見通しは立っていない。
食肉加工業の労働力不足も深刻だ。国内で食肉加工ができず、EU加盟国に枝肉を送り、精肉にして再輸入する業者も少なくない。また、クリスマスを前に七面鳥やアルコール飲料などが欠品する懸念も高まっている。小売業者は独自にドライバーに特別給与を支給したり、コンテナをチャーターしてモノの確保に動いているが、輸送費用や衛生証明書など…
残り963文字(全文1663文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める