AIブームで急成長のNVIDIAとTSMC 先端半導体で不動の地位 吉川明日論
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製造ラインを持たないファブレス企業のエヌビディアと、自社ブランドの半導体を持たないTSMCの組み合わせは盤石だ。
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先端半導体の米NVIDIA(エヌビディア)は、半導体の設計・販売を行い、製造ラインは持たないファブレス企業で、生成AI(人工知能)ビジネス開発に必須な半導体として需要が急増している。この動きは半導体市場全体の「シリコンサイクル」(半導体需給の波)から完全に独立した特殊な動きだ。エヌビディア製品の集積度は他の半導体をはるかに超え、非常に複雑で高付加価値なもので、空前の生成AIブームも相まって急成長を続けている。
エヌビディアは驚異的な株価の上昇を受け、今年6月には時価総額が3兆3400億ドル(約527兆円)と一時世界トップとなった。エヌビディアは長年、世界最大の半導体企業であった米インテルを抜いてそのポジションを奪取しており、ほとんどのハイテク企業がAIビジネス拡大に躍起となる中、その技術はハイテクビジネス全体の成長を支えている。強力な代替品が存在しない現状での時価総額は相応だろう。
そして、エヌビディアの急成長は、インテルの牙城であったデータセンター市場での半導体の景色を一変させた。いまやデータセンターを構成するサーバーのプロセッサーは汎用(はんよう)のCPU(中央演算処理装置)から、高速なAI処理が可能な超並列計算に特化したGPU(画像処理装置)に置き換わり、成長分のほぼすべてをエヌビディアが掌握する(図)。
エヌビディアのAI向け半導体技術は、データ転送速度の速いHBM(広帯域幅メモリー)や、先端製造装置、先端パッケージ技術など他の分野にも大きく波及する。一方、半導体技術の動向は、国家安全保障上の戦略的重要性を高めており、米国による中国への輸出規制はますます厳しくなっている。エヌビディアは新製品を次々と開発して市…
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週刊エコノミスト
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