売り場縮小で雑誌休刊が止まらない 新たな販売経路開発が急務 永江朗
紙の雑誌の市場縮小が止まらない。出版科学研究所の発表によると2024年上半期、紙の雑誌の推定販売額は2025億円で前年同期と比べて7.8%のマイナスだ。雑誌の休刊も続いている。アイドル雑誌の『ポポロ』(麻布台出版社)、『声優アニメディア』(イード)、女性ファッション誌の『ジェリー』(文友舎)、『ステディ』(宝島社)など。なかでも『ポポロ』や『声優アニメディア』は、根強いファンに支えられて底堅いといわれていた。
紙の雑誌をめぐる環境は悪化の一途をたどっている。取次大手の日本出版販売がコンビニへの雑誌卸から撤退し、同業のトーハンが引き継ぐものの、雑誌を扱わないコンビニも多数出てくるもようだ。トーハンのキャパシティーの問題もあるが、コンビニ経営者にとって雑誌はもはや魅力的な商品ではない。
大都市の駅売店ではコンビニとの協業やコンビニへのリニューアルが進むが、こちらでも雑誌の扱いを縮小したりやめてしまったりする店舗が少なくない。
そして新刊書店の激減。この20年で書店数は半減したが、それは雑誌の販売拠点が半減したことを意味する。トーハンは小規模書店の開業を支援する「ホンヤル」という取り組みを始めるというが、扱いは書籍のみで雑誌は除外される。書店、駅売店、コンビニ。雑誌を買える場所がなくなっている。雑誌が売れないので販売場所が減り、販売場所が減るので雑誌が出せなくなるという悪循環だ。
ただし、すべての雑誌が売れていないわけではない。こんな時代に好調な雑誌としてよく話題になるのが50代以上の女性をターゲットにした『ハルメク』(ハルメク)だ。日本ABC協会の公査による実売は44.3万部。同誌の最大の特徴は「書店では買えない」ことだろう。読者の手もとに直接届く定期購読誌である。取次と書店へのマージンも不要で、返品リスクもない。雑誌『ハルメク』をベースに、通販や会員制ウェブサービスなども好調だ。
厳しいことを言えば、既存の流通チャンネルだけに依存していたのでは紙の雑誌の未来はないだろう。新たな経路を切り開くしかない。
この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。
週刊エコノミスト2024年8月27日・9月3日合併号掲載
永江朗の出版業界事情 市場が縮小し、雑誌休刊が止まらない