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英アームが脱モバイル依存を狙ってSDV用ソフト開発支援に注力 津田建二
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英アームはモバイル依存からの脱却を図るため、SDV用ソフトウエアの開発支援ビジネスを拡大している。
車載デバイス“仮想化”技術でパナソニックと戦略的提携
11月7日に東京・港区で開催された英アームの技術者会議「Arm Tech Symposia 2024」は、これまでのイベントとは異なり、将来のクルマ、すなわちSDV(ソフトウエア定義のクルマ)への搭載を狙った発表となった。
アームはCPU(中央演算処理装置)コアを手掛ける。CPUコアはCPUのハードウエアの構成とCPUが処理するソフトウエアを決定付ける基本設計図である。アームはCPUコア「Armコア」の設計情報のライセンスを半導体メーカーに提供している。
Armコアは高性能かつ低消費電力の強みを生かして、特にスマートフォン向けCPUでは標準となっている。一方で、アームはArmコアのモバイル依存からの脱却を図るため、データセンター向けのコンピューターや、「富岳」のようなスーパーコンピューター、さらには最近登場してきたAI(人工知能) パソコンやAIスマートフォン向けのCPUコアへと手を広げてきた。今回のイベントは、CPUコアの領域をもっと広げようという意思の表れである。
具体的には、SDVに向けて、ハードウエア(CPU)とソフトウエアを同時に開発するための手法や、いくつかのI/O(入出力インターフェース)を標準化することによって開発期間を縮めることを狙っている。
アームはこれまでSDV向けのソフトウエア開発環境であるSOAFEE(Scalable Open Architecture for Embedded Edge、ゾフィー)と呼ばれるクラウドネーティブなソフトウエアの開発環境コンソーシアムを組織化してきた。この組織には、クルマメーカーの米ゼネラル・モーターズ(GM)やティア1(メーカーに直接納入する1次サプライヤー)の独ロバート・ボッシュや独コンチネンタル、さらにクラウドサービスの米AWS(アマゾンウェブサービス)、ソフトウエアの米レッドハットなどが参加している。
シンポジウムの基調講演で、アームのシニアバイスプレジデント(VP)兼オートモーティブ事業部門ゼネラルマネジャーのディプティ・ヴァチャーニ氏は、「SOAFEEを使ってソフトウエア開発を進めると、SDVのようなソフト開発期間を2年縮めることができる」と述べている。
仮想化技術を強化
アームはこのほどパナソニックオートモーティブシステムズ(PAS)と共にSDVの標準化に向けて戦略的な提携を結んだ。SDV向けの柔軟なソフトウエアスタック(ソフトウエア要素やプロトコル要素をブロックに見立てて、その集合を表現した図)を構築する。今回の提携で重要なことは、ソフトウエア開発をハードウエアから切り離すためにデバイスの仮想化フレームワークのVirtIO(Virtua…
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週刊エコノミスト
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