米中貿易戦争 米国の方針転換で「合意」も 分断に歯止めは掛けられない=今村卓
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米中貿易協議は「第1段階の合意」に達した。米中双方は2019年12月15日に予定していた追加関税の発動を見送り、エスカレートする一方だった米中貿易戦争に初めて歯止めが掛かった。世界経済にとっても停滞懸念を和らげる変化だ。
とはいえ、今回の合意の柱は中国による米国製品の大量購入と米国の関税の一部撤廃にとどまる。米国は第1~3弾の2500億ドル分を維持し、中国の関税引き下げの要求に部分的にしか応じなかった。合意には中国の知的財産の権利保護の強化や技術移転の強要禁止が盛り込まれたが、具体策は乏しい。しかも、米国製品の大量購入は規模が大きすぎて達成は困難との見方が多い。米国製品の輸入を2年間で2000億ドル増やす、農産物輸入は年400億ドルに拡大するという数値も米国側が発表しただけであり、中国は言及していない。
これだけ協議が難航し、限定的な合意にとどまった理由の一つは米中の関係に変化が生じていることだろう。従来は景気減速が止まらない中国が守りの姿勢だった。中国は米中貿易戦争の長期化に耐えられず譲歩に追い込まれるとの見方だった。逆に米国は景気が堅調で株高であり、貿易戦争が多少長引いても構わない、むしろ中国に圧力をかけられる攻めの姿勢の立場だった。
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週刊エコノミスト
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