金と地政学 ドル高でも価格上昇の「怪」 ロシア、中国が保有量を拡大=江守哲
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2019年の金価格は堅調に推移し、9月4日には一時1トロイオンス=1557ドルと、6年ぶりの水準まで上昇する場面があった。その背景には、低金利の継続や米中通商協議の不透明さなどがある。また、政府・中央銀行による金購入も上昇要因と思われる。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、主要国政府・中央銀行の金保有量は着実に増加している。18年は前年比74・2%増の656・9トンだった。19年に入ってからも買いは続き、第1四半期(1~3月)は前期比85・1%増、第2四半期(4~6月)は同53・4%増だった。第3四半期(7~9月)こそ同38・3%減となったが、第1~3四半期では同11・6%増となっている。第3四半期の平均金価格は1トロイオンス=1472ドルと、第2四半期の1309ドルから大きく上昇した。
基本的に、政府・中銀は安い価格水準で金を買う「バーゲンハンター」だ。金価格が大きく上昇すると、購入量を絞る傾向がある。しかし、金価格の下落時には、政府・中銀の買いが入るため、金価格の下値は抑えられる。そして、一旦購入すると市場ですぐに売却することはない。つまり、市場から吸い上げられた後、長期間保有され続けるため、必然的に需給は逼迫(ひっぱく)しやすくなる。こうした構図が金価格の下値を支えている。
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週刊エコノミスト
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