中国の養豚“爆食”が世界のトウモロコシ価格をつり上げる
有料記事
コーンの高騰を引き起こした中国養豚“爆買い”の真相=高橋寛
今年7月に入って食用油、マヨネーズや豆腐などの値上げが相次いだ。油脂の原料穀物である大豆や、コーン価格が高騰したためである。この大豆やコーンの高騰の主要因は、中国の養豚飼料向けの大量買い付け、いわゆる“爆買い”によるものであった。中国は世界全体の半数に当たる4億頭以上が飼育されている養豚大国である。その中国で豚の疫病のまん延と中国政府の政策により、養豚産業構造の急激な変化がこの2~3年で起きているのである。
2018年8月に中国遼寧省で発生した家畜伝染病であるアフリカ豚熱(ASF、旧名アフリカ豚コレラ)は、瞬く間に中国全土から東南アジアの近隣諸国まで感染が広がった。ASFは、感染豚が100%死亡する。パンデミック(感染爆発)の要因の一つとして、非加熱のウイルスに汚染された肉や野菜も含まれる食品残渣(ざんさ)(残飯)を餌に使っていたことが挙げられている。
翌19年から、衛生対策が不十分で感染リスクの高い零細養豚農家の廃業が相次ぎ、豚の飼養頭数は年初の4億3000万頭から年末には3億1000万頭へ減少した。これらの廃業に伴い、母豚、肉豚、子豚までが売りに出され、と畜頭数が増加したため、19年前半は中国の豚肉価格は低迷した。
当時、世界中の穀物アナリストの多くは中国の豚の激減に伴い、養豚向け飼料穀物の需要が大幅に落ちると予測していたが、実際には中国の穀物需要が大きく落ち込むことはなかった。なぜならば廃業した零細養豚農家は、穀物ではなくもっぱら食品残渣を給餌していたからである。
「豚ホテル」ラッシュ
その後、飼養頭数減少により、豚の出荷量は大幅に減少したため19年後半から豚肉生産量が激減、20年には18年比で3分の1(1770万トン)も減少してしまった。ちなみに日本の豚肉生産量は年間約130万トン(20年、枝肉換算重量)である。その13倍以上という膨大な量が減少したことになる。
豚肉供給の大幅減に伴い、中国の豚生体価格は19年7月から高騰し始め、20年末までの1年半の間、史上最高値レベルで推移した。最高値を付けた19年1…
残り1714文字(全文2614文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める