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週刊エコノミスト Online 大学の地方学生争奪戦 

地方の“逆襲” 「産業振興」の役割担い 今春に3公立大学が開学=中根正義

 少子高齢化が進む日本において、特に地方での後継者難は深刻で、地場の産業が細ることが人口減にさらなる追い打ちをかけている。そうした中で、地方の大学が今、大きな期待を集めているのが「地域の産業振興」という役割だ。今年4月には叡啓大学(広島県)など公立3大学が同時に開学した。大学は、どう地域の期待に応えようとしているのか。

 年々上昇し続けている日本の大学進学率は、地域別、男女別に見てみると、実は格差が大きいことが分かる。文部科学省によると、2019年度の大学進学率は53・7%、20年度はさらに伸びて54・4%と過去最高を記録した。

 しかし、男子の進学率はトップの東京都が72%に達するのに対して、最も低い岩手県、山口県、沖縄県は39%と、東京都とは33ポイントの差がある。女子の進学率も、トップの東京都(73%)に対して、鹿児島県(34%)とは倍以上の開きがある。

 とはいえ、見方を変えれば、少子化が進む中でも地方にはまだまだ進学率を引き上げる余地があることを示していると言えないだろうか。実際、地方でも大学進学率は上昇し続けており、大学にとっては募集戦略を吟味すれば進学需要を掘り起こすことは十分にできそうだ。

 大学が地域の産業や人口動態に与える影響も大きい。筆者が都道府県ごとに在籍する大学生数と企業の従業員数、生産年齢人口との相関関係を調べたところ、正の相関関係があることが分かった。さまざまな要因は考慮しなければならないが、地元の産業に資する人材を輩出する役割を大学が担えば、企業の従業員数増につながり、結果として生産年齢人口を増やすことができそうだ。それは、地方の大学の生き残りにもなる。

 大学進学率が低い地域は総じて人口減少も大きい。そこで、人口流出に悩む地方で大学進学率を上昇させられれば、地方の大学にもより多くの学生が進学し、結果として人口流出に一定の歯止めをかけられることになる。そのために、「地域の産業振興」の一端を地方の大学に担ってもらおうという期待が高まっている。

人口減、後継者難を解決

 ところで、昭和から平成の時代にかけて、公立大の数が急増していることをご存じだろうか。公立大は今年4月現在で全国に98校あり、その数は国立大(86校)を上回っている。増えているのは、首都圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)や中部圏(岐阜、愛知、三重)、関西圏(滋賀、京都、大阪、兵庫、和歌山)以外の地域で、この3地域以外にある大学は7割超の71校になる。

 地方に公立大が増えたのは、看護師などの保健福祉人材の不足といった地域の課題に対処しようと、各地方自治体が自前で大学を設置してきたことが背景にある。旺文社の調べによると、公立大の学問分野別で最も学科が多いのが看護学(50学科)だった。また、医療・保健学(28学科)や福祉学(21学科)の設置も多い。

 そうした中で、「地域の産業振興」という側面から今年4月、新規開学したのが、広島県公立大学法人が運営する叡啓大学と、兵庫県公立大学法人の芸術文化観光専門職大学、新潟県の三条市立大学の3校だ。いずれも、地元企業との連携によるインターンシップなどを実施する。

 叡啓大学はJR広島駅から徒歩10分圏内と、交通の便も良い広島市中心部に開学した。ソーシャルシステムデザイン学部(定員100人、うち20人が留学生)のみの単科大学である。

 ICT(情報通信技術)やデータサイエンス、ロジカルシンキング(論理的思考)、クリティカルシンキング(批判的に捉え、客観的に分析する思考)などを身につける基本科目に加え、グローバル時代に求められる英語コミュニケーション…

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