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《相続&登記》問題の土地・建物だけに絞った新制度でコスト削減=横山宗祐

 2023年4月施行の改正民法では、財産管理制度の見直しがなされ、所有者不明土地・建物管理制度、そして、管理不全土地・建物管理制度の四つの管理制度が新設された。また、既存の管理制度の改正として、相続財産の保全のための財産管理制度の見直しも行われた。本稿では、新設された四つの管理制度について説明したい。

 所有者が誰かが分からない土地・建物があるとき、または、誰の名義の土地・建物かは分かっているが、その人がどこにいるのか分からないときに、それをそのまま放置しておくと、土地であればゴミが不法投棄されたり、建物であれば老朽化して火災などの原因になったりするおそれがある。

従来は全財産把握必要

 これまでは所有者が分からない土地や建物を管理する方法として、相続財産管理制度や不在者財産管理制度などが利用されてきた。しかし、この制度は、問題となっている土地・建物だけでなく、預金や負債も含むその人の財産全般の管理を行うこととなる。そのため、申し立ての際に納める予納金は高額となる傾向にあった。東京では、相続財産管理人については100万円程度、不在者財産管理人については50万円程度、予納金を納めるケースが多いとされている。

 さらに、土地・建物が共有となっており、所在不明となっている共有者が複数人いるケースでは、不在者財産管理人を不明者ごとに選任する必要があるため、よりコストがかかる。

 これらの問題を解決するため、今回の改正で、問題となっている土地・建物という「物」に着目した管理制度が新設された。これにより、個々の土地・建物のみを対象とした管理を行うことができることとなり、管理人の業務の範囲は特定される結果、予納金も相対的に低額に抑えられることが想定されている。また、先に挙げた所在不明となっている共有者が複数いる場合でも、「物」に着目した管理制度であることから、一人の管理人での管理も可能となった。

 ◆所有者不明土地・建物管理人

 ■ケース1

 X宅の隣家が空き家となって数年たつ。建物の保存状態も悪く、今にも倒壊しそうだ。もし、地震が発生したら、隣家が倒壊するだけでなく、自宅にも重大な影響が出そうだ。

 これまでは、Xは裁判所に対し、不在者財産管理人選任の申し立てを行うなどして、隣家の管理を求めることはできた。しかし、この手続きでは、隣家のみならず、不在者となった隣人の財産一般の管理を求めることとなるため、管理人は不在者の財産をできるだけ広く探し、目録を作り管理をしていくこととなる。Xとしては、隣家の管理をしてさえくれればよいにもかかわらず、不在者財産管理制度では特定の財産のみの管理という扱いはできない。このため申し立ての際の予納金などが高額となり、Xは自宅を守るためにかかる費用がかさむこととなる。

 新設された所有者不明建物管理制度では、特定の財産を対象とした管理を求めることができる。本ケースでは、隣家の管理を行ってもらうよう、裁判所に所有者不明建物管理人選任の申し立てを行うことが考えられる。では、本ケースでは選任が認められそうか。

 まず、新設された所有者不明土地・建物管理制度は、「利害…

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