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マーケット・金融

世界で実用化が進む「中央銀行デジタル通貨」は何がすごい? 中島真志

スマートフォンに表示させたデジタル人民元でコーヒーを購入(北京で2021年9月)Bloomberg
スマートフォンに表示させたデジタル人民元でコーヒーを購入(北京で2021年9月)Bloomberg

 世界中で法定通貨が「デジタル」に変わろうとしている。そのメリットは何か。

金融の新エコシステムが生まれる

 中央銀行が発行するデジタル通貨「CBDC」を発行しようという機運が世界で高まっている。すでにカンボジア、バハマ、東カリブ、ナイジェリアといった国々では、CBDCが正式に導入されており、その国の法定通貨として人々による利用が始まっているほか、数年内に導入を予定している国も増えている(表1)。

 国際決済銀行(BIS)の調査(今年5月公表)によると、世界の中銀のうち、90%がCBDCの調査や実験に取り組んでおり、62%が実際にシステムを構築して実証実験を、また、26%がすでに消費者や商店、銀行が参加した形のパイロット実験を行っている。

デジタル人民元が始動

 現時点でCBDCを実用化した国はいずれも経済規模の小さい新興国だ。これに対して、今最も注目されているのが、「デジタル人民元」の発行秒読みといわれる中国だ。早ければ、2022年中にも本格導入するのではないかとみられている。中国の中銀である中国人民銀行は、14年からCBDCのチームを立ち上げて研究を始めており、20年からは一部の実験都市で多くの消費者や店舗(スターバックス、マクドナルド、サブウェイ、配車アプリの「ディディ」、食品配達の「美団」、動画サイト「ビリビリ」などを含む)が参加したパイロット実験を行っている。

 深圳、北京、蘇州などの都市では、200元(約3000円)のデジタル人民元を無料で5万~10万人に配布するという大規模な実験を繰り返しており、延べ70万人以上に日本円換算で20億円以上を配布するという力の入れようだ。これは、実際に国民にデジタル人民元によってモノやサービスへの支払いを行うという経験を積ませることを目的にしているものとみられる。

 今年1月には、デジタル人民元のスマートフォンアプリが、アップル、グーグルなどのアプリストアに公開され、国民は自由にダウンロードして利用できるようになっている。2月の北京の冬季オリンピック会場でも、海外からの報道関係者などがデジタル人民元を使う機会を与えられ、オリンピックが世界へのお披露目の場として使われた。デジタル人民元の利用実験は、店舗での買い物だけでなく、地下鉄やバスなどの公共交通機関での利用、ネットショッピングでの利用、ATM(現金自動受払機)を通じた入出金実験、税金の受け入れ実験、政府機関の支払い実験などに広がりをみせている。

 デジタル人民元が利用可能な地域も、当初の4都市から、現在は全国の23都市へと拡大されており、すでにデジタル人民元で決済できる店舗は、今年5月末時点で全国457万店にまで増えてきている。個人用のウォレットを持つ国民は2億6000万人に達しており、まだテスト段階にもかかわらず、日本の人口を大幅に上回る規模のユーザーを獲得している。

 このほか、法人向けウォレットを導入する企業は1000万社に上っており、デジタル人民元による決済金額は、875億人民元(約1・7兆円)となっている(いずれも21年末)。このように、テスト段階ながら、デジタル人民元は着実に利用者層を広げてきており、あらかじめ利用者層を広げて軌道に乗せたうえで、正式な稼働開始にこぎ着けようとしている。中国がデジタル人民元を正式に発行すれば、世界に与える衝撃は大きなものとなるだろう。

 スピード感では中国に劣るが、欧米日の3極も動いている。欧州中央銀行(ECB)は21年10月からデジタル・ユーロの実証実験を開始、米連邦準備制度理事会(FRB)はこれから方針を決めていくという段階にある(図1)。

 日本銀行も20年7月に、「デジタル通貨グループ」というCBDCの専門部署を新設した。デジタル通貨の専担部署を作るというのは、日銀の歴史の中でも初めてだ。この部署を中心に、21年度から3段階の実証実験を進めている(表2)。ただ、日銀の黒田東彦総裁は、「デジタル円の発行の可否は26年までに判断することになるだろう」と発言している。これは、取りも直さず、23年4月までとされる自分の任期中には「判断はしない」ことを意味している。

キャッシュレス決済と別物

 CBDCに対しては、「SuicaもPayPayもあるのに、はたしてデジタル円が必要なのか」という疑問を持つ人もいるだろう。しかし…

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