テクノロジー

バイオ医薬品の製造拠点や人材育成が日本の急務 大政健史

 バイオ医薬品の研究開発・製造には複雑で高度な知識が求められる。日本でも人材育成が急務だ。>>特集「これから来る!バイオ医薬株」はこちら

複雑・高度化する医薬品製造

 米ホワイトハウスは2022年9月14日、バイオテクノロジーとバイオ製造の強化のために20億ドル以上の資金を投入すると発表した。この発表で重要なのは、単なるバイオテクノロジー研究の振興だけではなく、バイオ製造を自国内で強化するという点にある。

 バイオ医薬品は、抗体医薬、遺伝子治療、細胞医薬、さらにはmRNAワクチンなども含め、その高い有効性から、さらなる発展が期待されている。今回の米国内での生産強化の特徴は、安全保障面の観点のみならず、米国のイノベーターが容易にアクセスできるような米国内のバイオ生産拠点の整備も含まれる。さらには、次世代のバイオテクノロジー人材についても、キャリアパスを視野に入れてサポートし、バイオ医薬品会社と結びつけることにも言及している。

 日本においても経済産業省が9月30日、ワクチンの生産体制強化に向け、バイオ医薬品の製造拠点などを整備する事業について17の企業や研究機関などを選び、約2265億円を投入すると発表した。拠点を通常時と新型感染症流行時で利用可能な「デュアルユース」技術として整備し、緊急時には平時の生産から切り替えて国内で迅速にワクチン製造を開始できる体制を支援するものだ。

 この事業は新型コロナウイルス感染症の世界的流行を受けたワクチン開発・生産体制強化戦略の一貫とされる。まずはワクチン製造に用いるとはいえ、重要な点は、国内のバイオ医薬品生産の拠点を整備することだ。米国同様、バイオ分野のイノベーターが、研究開発から実際の産業に直結できるバイオ製造の国内での拠点・製造を強化することに他ならない。

 筆者は長年、生物工学の専門家として、バイオ生産、特に細胞培養を用いた抗体医薬等のバイオ医…

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週刊エコノミスト

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