週刊エコノミスト Online

Sponsored

若き幹事長が挑む〝政党の経営戦略〟

結党10年を迎え、2022年夏の参院選で改選議席を倍増させた「日本維新の会」(以下、維新)。躍進のウラには同年3月に作成した「党の中期経営計画」があるという。永田町に経営計画を持ち込んだのは若き幹事長、藤田文武衆議院議員だ。「政治の世界を変えたい」と語る藤田幹事長に、維新が目指す政治を聞いた。

異例づくめの「党の中期経営計画」とは?

 2021年12月、藤田幹事長は党内に「党改革プロジェクトチーム(PT)」を設置した。「党の中期経営計画」策定をするためだったという。「僕が幹事長に就任(2021年11月)の際、当時の松井一郎代表、馬場伸幸共同代表に『党の中期経営計画』を作らせてほしいと提案しました。民間では、伸びていく会社には中期経営計画が必ずと言っていいほどある。むしろ、無かったら伸びない。そうしたら2人とも『それは面白い!』と即答し、やることになったんです。しかし、僕が勝手に作っていいものではない。民間なら経営企画室で作るものです。なので、政党にとって経営企画室にあたる部署であるPTを設置して作ることになりました」(藤田氏)

 PTには、若手の国会議員、地方議員を約10人を集めたという。党の根幹のプラン策定にはベテランの国会議員が中心になるというのが〝永田町の常識〟だった。しかし、藤田幹事長はその常識をいとも簡単に覆した。「僕自身の強みは経営実務です。ゼロから会社を立ち上げ、資金繰りに苦労したり、倒産の危機に直面して立ち直らせたり。そんな経営実務を経験すると、合理的な判断や効率的な戦略を考えるようになる。それを〝政党経営〟に活かそうと考えました。そうした実務に精通している若手が、維新には地方議員にも国会議員にも数多くいます。いわば、人材の宝庫です。彼らと一緒になって、現時点の党の分析や数字の妥当性などを検証し、定量的な数字を含めた目標設定を明確にしたのです」

 2022年3月に発表された中期経営計画には、①2022年夏の参院選で21人以上、②2023年の統一地方選挙後で地方議員600人以上、③次期衆院選で野党第1党ーー3本の柱を打ち出した。すでに終わった①の参院選では、改選6議席から倍増の12議席を獲得し、非改選の9議席と合わせ21議席となり、目標を達成した。②は、現在400人いる全国の地方議員および首長から、1.5倍という目標に設定した。「永田町では、数値目標を打ち出さない。責任を取らなければいけないからです。でも、それは違うと思う。だから、僕たちは組織を最大化させる目標としてしっかりと数字を打ち出し、その目標を達成するための具体的な戦略を明示し、できなければ責任を取る姿勢を明らかにしました。企業経営では当たり前のことをやったに過ぎません」

有権者にとって投票は“未来への投資”

 藤田幹事長は、涼しげにこう語った。そして、この3つの数値目標には〝裏テーマ〟が隠されていると明かす。

 「この中期経営計画で何を考えているのかと聞かれれば、企業経営に例えると『投資を得る』ことなんです。夢物語で『来年は5億円、再来年は10億円、5年後には30億円を売り上げて上場準備に入ります』なんてプレゼンしたって、具体的なことが何もないと実現もしないし、プレゼンは失敗に終わります。しかし、具体的な数値目標を打ち立て、1つ目の数字がクリアされ、2つ目の目標が達成されるとどんどん投資が生まれます。政党に置き換えた場合の投資は、献金などおカネの面もありますが、それだけではありません。まずは、候補者。候補者になっていただくということは、その人の〝人生を投資〟していただくことだと思っています。自分の人生、大事な時間を維新という政党で政治活動し社会に奉仕する。それって、まさに〝人生の投資〟ではないでしょうか。また、有権者の皆さんの投票行動、1票を投じることも投資です。維新のやってきたことへの評価、訴えていることへの共感が1票を生むわけですが、それこそが自分たちの未来に対する投資なわけです。政党への可能性を通して日本の政治を変えていく、まさに〝投票は未来への投資〟なのです」 

 しかし、維新は全国政党として結党して10年が経ち、野党第2党となったものの、未だに〝大阪の政党〟というイメージが強い。今後はそのイメージ払しょくや全国への認知度をどう広めていくかがカギとなる。

党勢拡大は2023統一地方選がカギ

「僕が全国を回ってみて改めて感じたのは、維新は〝テレビの中の政党〟ということです。有権者の皆さんは『維新はいいこと言っているけど、身近に議員はいないよね』って話になる。つまり、テレビ画面の中での出来事で、自分の生活の中に維新の政策とかが染み込まない。これって実は飛び抜けた解決策はありません。『最大限できる努力』を地道に続けていくしかない。では、『最大限できる努力』って何か。それこそが、2023年春の統一地方選なのです」 

 維新は大阪府内33市9町1村にくまなく地方議員がいる。大阪府、大阪市では与党として実績を積んでいる効果が広まっているとみていいだろう。一方、全国の都道府県では議員が1人もいない地域もある。47都道府県中、維新の支部は35しかないという。藤田幹事長は、こうした〝維新空白地域〟に1人でも議員を誕生させ、その地域の人たちに〝維新の政治〟を実感してもらうことこそが、政治を変える一番の近道であると訴える。「大阪でやってきたことは、何も大阪特有の改革ではありません。行政改革をはじめ、さまざまな手法は全国各地で使えるものです。1人では何も出来ないと言う人もいますが、その地域の課題、問題点を掘り起こす、それを議会のみならずSNSやタウンミーティングなどで情報を開示していく。地域の皆さんが、問題を放置していたことがおかしいんだと分かり、維新の議員が掘り起こしてくれたことが正しいと分かれば、認知度、信頼度は高まっていきます。そのために、今度の統一地方選はとても重要だと位置付けています」 

 統一地方選が党勢拡大のカギというわけだ。しかし、その候補者探しは容易ではないだろう。中期経営計画で地方議員を1.5倍の600人以上にするという計画は果たしてうまくいくのか。「すでに候補者を擁立するための『人財発掘プロジェクト』を立ち上げています。まさに人こそ財産という意味です。この中で、『維新ご当地政治塾』を各地で開くとともに『維新政治塾オンライン』では全国から塾生が集まっています。政治に関心を持つ方々が参加され、候補者として出馬してくれる人たちも多くいらっしゃいます。重要なのは、在野の方々。経営者であったり、サラリーマンやOL、主婦であってもいい。政治に関心を持ち、ここがおかしい、ここを変えたいという意欲があれば、政治は変えられる。それを維新で体感していただきたいのです。政治家への道は決して高いハードルではない。むしろ、市民の皆さんで掴み取って変えることが大事だと思っています」 

 政治不信が叫ばれて久しいが、果たして、若き幹事長の下で維新が永田町の常識を打ち破る日は近いのか。〝人財の投資〟が集まることを期待してやまない。

プロフィール:藤田文武(ふじた・ふみたけ) 1980年12月、大阪府寝屋川市生まれ。筑波大体育専門学群卒業後、高校教員やベンチャー企業の役員を経て独立、起業。17年、衆院選で大阪12区から維新公認で出馬するも落選。19年1月、大阪12区の補欠選挙に出馬し、初当選。21年10月の衆院選で再選。同年11月、新幹事長に就任。

日本維新の会の詳しい情報はこちら

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

3月19日・26日合併号

株価4万円突破! 勝つ投資16 新NISAで歴史的高値到来 時間を味方にしっかり分散■編集部19 インタビュー 代田秀雄 三菱UFJアセットマネジメント常務 アクティブ偏重に疑問 低コストにこだわり19 使わなきゃ損! 投資非課税の新NISA 無期限化と枠拡大&復活■編集部20 新NISA 日本株、 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事