週刊エコノミスト Online 今なぜ麻雀ブーム?
巣ごもりで全自動マージャン卓が好調 白鳥達哉(編集部)
有料記事
半導体不足の逆風をものともせず、全自動マージャン卓の売り上げが伸びている。>>特集「今なぜ麻雀ブーム?」はこちら
家庭用は売り上げ1.5倍に
昨今の新型コロナウイルスの感染拡大やマージャン人気の高まりは、マージャン用具の製造企業にも少なからず影響を及ぼしている。
「正直、家庭向けがこんなにも売れるのかと思った」
こう話すのは、マージャン牌(ぱい)や業務用・家庭用全自動卓などの関連製品を製造する大洋技研の古田晃基氏だ。
コロナ禍で人々の行動が制限される中、特に家庭用の売り上げが伸び、多いときで前年比の1.5倍の売り上げを記録した。電子商取引(EC)での販売を2019年に始めており、その好影響もあるものの、それを抜きにしても2割程度は需要が伸びていると古田氏は見ている。家庭用は価格帯で2機種あるが、30万円を超える高級機種を買い求める個人客が多かったのも驚いた点だったという。
国内シェア9割
同社の親会社に当たる大洋化学は、創業から69年目を迎える老舗化学メーカー。洋服のボタンや人工真珠をはじめとした樹脂加工製品の製造を主軸として経営を始めた。
そこで使っている樹脂が象牙に似た質感を持っていたため、1964年にマージャン牌の製造を開始。そのころは全自動卓事業には参入していなかったが、他社の作る全自動卓は機構部が板金製で70キロ近くの重さがあり、納品ひとつにも多くの人手がかかる。それなら、すべてプラスチックで作ったらどうかという話が上がり、88年から全自動卓事業に参入した。
参入当時、全自動卓の国内メーカーはいくつか存在していたが、現在は大洋技研を含め、2社しか残っていない。そのような中で、同社は自動配牌・自動ドラ出しやICチップによる点数計算など、ユニークな機能を持つ全自動卓を開発し続けた。
「自動配牌・ドラ出しを一度にできる機能を作っているのは当社だけ。特に業務用に限っていえば、現在は国内シェアの約9割を占めるまでになっている」(古田氏)
コロナ禍で売り上げが増える一方、悪影響もなかったわけではない。特に半導体不足の被害は直撃を被ったために製造が追いつかず、注文の5割程度しか消化できない状態が続いた。現在はようやく基盤が潤沢に回るようになり、今年中には状況が緩和される見込みだという。
業務用については、18年に始まったプロのリーグ戦である「Mリーグ」を介する形で、マージャン店からの問い合わせが増えているようだ。大洋技研はMリーグの公式サプライヤーに名を連ねており、21─22年のシーズンでは、視聴のしやすさなどを考えて製作された最新機種「アモスレックス3」が対局に使われている。
進化する配牌機能
それまで、業務用はいくつかのモデルを出したものの、取り立てて新しい機能は提供してこなかった。しかし、アモスレックス3では、対局をテンポ良く進めるという点を考慮し、「牌の上下自動…
残り1231文字(全文2431文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める