ブリヂストンは、今年、企業コミットメント「Bridgestone E8 Commitment(ブリヂストン イーエイト コミットメント)」を制定し、持続可能な社会を実現し、支えていくことを宣言した。そしてこれを軸とベクトルに、2031年の創立100周年に向けた「2030年長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」を発表し、変革を加速させていくとしている。Global CEOの石橋秀一氏に取り組みの核心を聞いた。
軸をブラさず、変化に対応 レジリアントなブリヂストンへ
―未来に向けては、まず2050年を見据えたビジョンを掲げています。
私たちは「最高の品質で社会に貢献」を不変の使命とし、「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして、社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」というビジョンを掲げています。そして、ビジョンをグループ全体で具体化するために、地球は未来の子供たちからの預かり物という考えのもと、新たに据えたのが「E8コミットメント」です。
―「E8コミットメント」の概要は。
社会の変化や、ヒト・モノの移動を常に足元から支えてきたタイヤ・ゴム業界のリーダーとして、持続可能な社会を実現し支えることは、私たちが果たすべき役割であり責任だと考えています。「E8コミットメント」は、そこにブリヂストンらしい独自の視点や想いを盛り込み、「E」で始まる8つの価値、約束を定義したものです。カーボンニュートラルを目指す「Energy」や、心動かすモビリティ体験を支える「Emotion」などにコミットしていきます(図参照)。
―8月には「2030年長期戦略アスピレーション」を発表しました。
E8コミットメントを、経営を進める軸とベクトルとし、創立100周年に向けて実現したい姿を示したのが「2030年 長期戦略アスピレーション」です。モビリティ業界においても社会全体においても大きな変化が続き、私たちを取り巻く環境はまさに変化が常態化しています。その中でも軸をブラさず柔軟に機敏に対応できる、「レジリアントな“エクセレント”ブリヂストン」への変革を目指します。
「新たなプレミアム」の創造に加えソリューション事業も強化
―具体的にはどのような取り組みがあるのでしょう。
プレミアムタイヤ事業では、独自に「新たなプレミアム」を創造することへ挑戦しています。例えば、環境性能と運動性能を両立するタイヤ基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」。タイヤの軽量化や転がり抵抗低減により電気自動車(EV)の航続距離や電費を大幅に改善することに寄与し、乗用車用タイヤにおいては、「EV時代の新たなプレミアム」と位置づけています。今後本格的なEV時代を迎える中、EV装着に最適な技術として、搭載商品を拡大していきます。また、「新たなプレミアム」のもう一つの柱である鉱山車両用タイヤ「BridgestoneMASTERCORE(マスターコア)」は、当社独自のスチールコードとゴムを接着する技術の搭載などにより、強靭な耐久性を実現、さらに、お客様の使用状況や鉱山レイアウトに合わせて、車両スピードや許容荷重の向上など、他の性能を犠牲にすることなくカスタマイズした性能アップを提供できる商品です。
―プレミアム商品の展開に加え、ソリューション事業を成長させていくことも重要になります。
プレミアム商品を「創って売る」基盤の上に、お客様が「使う」段階において、顧客課題を解決するソリューションを組み合わせて断トツ商品の価値を増幅させていきます。これに欠かせないのが、当社の強みである小売サービスソリューションネットワークです。ブリヂストンが全世界に持つ乗用車系ネットワーク約1万8200拠点、トラック・バス系約6800拠点、鉱山車両系約130拠点で、お客様のニーズにお応えして期待を超える商品やサービスの進化に努めています。さらに、タイヤやモビリティのデータを活用したソリューションについては、2022年からは、クラウドサービスなど、アマゾン社、マイクロソフト社と協業もスタートしています。
―データと新たなテクノロジーを組み合わせてタイヤ管理を自動化・効率化する、タイヤセントリックソリューション事業に注力することも発表しました。
トラック・バス用タイヤでは、「循環ビジネス時代の新たなプレミアム」として、プレミアムタイヤと、摩耗したタイヤの表面のゴムを張り替えるリトレッド、タイヤデータをモニタリングし適切なタイミングで実施できるメンテナンスを、お客様の使用条件に沿った組み合わせで提供しています。タイヤ一本一本を使い切ることでタイヤの価値を最大化すると共に、CO2排出量削減や資源生産性の向上など、環境負荷低減も両立できるビジネスモデルです。
サステナビリティに注力し売上収益も5兆円強規模へ
―グローバル企業としての、環境やサステナビリティの取り組みについてもお聞かせください。
カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーの実現へ向けた取り組みを強化し、サステナビリティビジネスモデルの構築を進めています。カーボンニュートラルへの取り組みでは、再生可能エネルギーによる電力比率の拡大や、自社の炭素排出量に価格を付けて削減につなげる社内カーボンプライシングの活用強化、グリーン&スマート工場化などを進めます。その効果として、2030年までに11年比でCO2排出量を50%削減し、50年にはカーボンニュートラルの達成を目指します。サーキュラーエコノミーでは、再生資源・再生可能資源比率向上に向けた材料開発やリサイクル事業の推進などにより、2030年までに再生可能資源比率を40%まで伸ばし、50年には100%サステナブルマテリアル化を実現したいと考えています。
―「2030年長期戦略アスピレーション」では、経営指標面でも意欲的な実現したい姿を掲げています。
ご紹介してきた多様な施策により、目指すべき「レジリアントな“エクセレント”ブリヂストン」として、現在4兆円規模の売上収益を2030年には5兆円強の規模となる5・3兆円レベルに拡大します。その内訳は、現在約2・5兆円規模のプレミアムタイヤ事業を3兆円レベルに、同じく1・1兆円規模のソリューション事業を2兆円レベルに伸ばします。営業利益についても、現在の4500億円規模から2030年には8200億円レベルに拡大します。これにより、営業利益率においても11%レベルから15%強のレベルを目指します。
―最後に、これらの目標達成に向けた決意、意気込みをお聞かせください。
創立100周年に目指すべき姿を実現できるよう、E8コミットメントを経営の軸とベクトルに、従業員はもちろん、社会、パートナー、お客様に私たちの挑戦に共感頂き、ともにブリヂストンらしい変革を加速していければと考えています。行く手には社会価値と顧客価値の両立、サステナビリティとビジネス成長の両立など、さまざまな困難が待ち受けていると思いますが、グループ一丸となって前進していきたいと思います。これからのブリヂストンにご期待ください。
ブリヂストンの公式サイトはこちら